その後も観客への取材を続けたが、清原氏の“球界復帰”に好意的な意見が多いようだ。かくいう記者も、少年時代は清原氏の打撃フォームをまねしていたファンの一人。久々の野球人としての清原氏が見られるとあって、胸を高鳴らせていた。

 清原氏の巨人時代のユニホームを着て訪れたファン歴18年の会社員、吉田亮平さん(24)もその一人だ。球場には午前3時から並んでいたという。

「絶対に見逃したくなかったので、早く着きすぎてしまいました。世間の厳しい目はありますけど、ファンは応援するしかない。元気な姿を見られるのはうれしいですし、野球界に復帰するのを信じています」

 ファンたちの思いを聞いていると、午後1時、ついにその時がきた。選手たちのシートノックが終わると、出入り口がある一塁側ベンチ付近には、多くの報道陣がシャッターチャンスを逃すまいと待ち構えた。

「本日視察に来られました清原監督です。みなさま大きな拍手でお迎えください」

 場内アナウンスが流れると、清原氏が出てきた。緊張からか表情はやや硬かったが、スタンドに深く一礼すると、徐々に柔らかい表情になっていった。選手たちには笑みをみせながら、激励の言葉をおくる。

「みなさんはプロ野球を夢見てやってきたと思います。今日はそのチャンスがありますので、精いっぱい悔いのないようにプレーしてください。頑張ってください」

 穏やかなオーラに、優しい語り口調は、“番長”と呼ばれた現役時代とはまるで別人だった。この3年半で思うところもあったのだろう。そこには“もう一度やり直す”という決意を感じた。

 11月30日の神宮球場でのトライアウト本選への出場をかけた選考試合は、2チームにわかれて2試合が行われた。バックネット裏から試合を見つめていた清原監督は時折、スタッフと談笑しながらも、プレーごとにメモを取りながら真剣なまなざしをグラウンドに向けていた。視力が落ちたのだろうか。ときおり眼鏡をかける様子に、現役時代からの時の流れを感じた。

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記者から薬物に関する質問もあった