実際、アンケートの回答でも撮影者側が「警察官を呼んだ」ことで解決したという事例があった。違法行為がないことを警察官の面前で「立証」できることは、時に撮影者のメリットになるようだ。
●撮影対象者以外の第三者から盗撮だと訴えられ、こちらから警察に連絡して疑いを晴らした。(70代男性/無職)
●特定の人間を撮影していたわけでもないのに削除ではなくSDカードにハサミを入れろとすごまれた。警察官を呼んで説得してもらった。相手が頑張っているので、不本意ではあったがこちらも警察官の説得に応じ、その日撮った150枚ほどを全削除した。(70代男性/無職)
撮影を不快に感じる相手から何を要求されるかはわからない。文句を言うだけでは飽き足らず、二つ目の事例のように相手から「データを消せ」と求められたという回答も複数あった。
●同じカメラを愛用されている方から聞きましたが、街中で特定の人物を撮影していないのに、データの削除を求められたとのこと。データを見せて、特定の人物を撮影していない旨を伝えて、事なきを得たとのことでした。(50代男性/職業不詳)
●夜の渋谷で若い女の子を無断で撮った知人が、その女の子からデータの削除を求められた。(50代男性/会社員)
だが結論から言えば、このデータ削除要求に応じる必要はない。三平弁護士によれば「そこまでするのは相手の過剰な要求だ」という。
「相手が(民事的な)違法行為を主張してきたのなら、立証責任は相手側にあります。原理的に考えれば、写真データを見せる必要もありません。提訴などの手続きを踏んで立証してもらえればいいだけです。
ましてや、SDカードを破壊しろなどという要求は毅然と拒否すべきです。また、回答にあったように『警察官の説得に応じて』データを消去する必要もありません。先に述べたように民事不介入の原則がある警察官が、民事的なトラブルについて当事者に何かを命じることはできません。正当な撮影活動をしている限り、警察官に何を言われようとデータ消去に応じる義務はないのです」
とはいえ、建前論で対応しても相手は納得しないだろう。こちらから譲歩して、写真データを見せるくらい歩み寄る姿勢で穏便に解決するのが賢い対応だという。ただ、その際に1点だけ気をつけておくべきことがある、と三平弁護士は指摘する。
「たとえわが子であってもポルノが疑われる子どもの裸写真や、下着系やヌードのポートレート写真が入っていると冤罪リスクが高まります。こうした写真がデータにあると、今度は撮影者側にわいせつな意図ではないことの『立証責任』が課せられます。そうした事態にならないように、スナップ撮影の前には写真の整理をしておくとよいでしょう」