【2】皮膚血管肉腫
皮膚血管肉腫は、皮膚にできる悪性腫瘍です。
言葉の定義の話をすると、がんは皮膚や粘膜などの上皮細胞からできた悪性腫瘍。肉腫は筋肉や血管など上皮ではない細胞からできた悪性腫瘍のこと。
皮膚血管肉腫は、血管の細胞が悪性化したものなので「がん」ではなく「肉腫」です。
この病気も、進行すれば命に関わります。
高齢者に多い悪性腫瘍なのですが、「内出血」と間違いやすいため発見がしばしば遅れます。
頭をぶつけた。転んで顔を打った。
そういった外傷のあと、なかなか治りにくい内出血が実は皮膚血管肉腫だったという患者さんが多い印象です。
おでこや頭にできた内出血が、まさか悪性腫瘍とは気がつかず、そのまま放置していたために肺に転移してから受診される方も少なくありません。
正確な統計データはないのですが、日本では年間200~300人くらいの新規患者さんがいると予測されます。とても珍しい部類の悪性腫瘍なのですが、早期発見が非常に重要です。
それでも、進行の度合いが一番低いステージ1で発見された場合でも、私たちの解析したデータでは5年生存率が20%以下でした(Oncoimmunology. 2016 Nov 4;6(1):e1253657.)。
少しずつ新しい薬が使えるようになってきていますが、まだまだ治療が難しい悪性腫瘍です。
【3】菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)
菌状息肉症という、むずかしい漢字の病気も皮膚にできる悪性腫瘍です。悪性リンパ腫とよばれるもので、簡単にいうと血液のがんです。
菌状息肉症はこれまで紹介した二つの悪性腫瘍とは違い、年配の方だけでなく若い人にもできます。
この悪性腫瘍は、アトピー性皮膚炎と間違えられることが多いため注意が必要です。
初期の段階では、ただの乾燥肌のように見えたり、湿疹と間違えられ、皮膚科専門医でも診断は難しいです。
菌状息肉症も悪性腫瘍ではありますが、進行は比較的ゆっくりで数年から数十年かけて進みます。安定したままの人や治る患者さんもいます。