しかし、工藤のようになるのは難しい。その一例が、飯島直子だ。ヤンキーデビュー(?)はじつに小学校4年のときだった。
「コンサートに行っておまわりさんに見つかったんです。それが、初めての補導でした」
彼女は当時、ロックバンド・レイジーの大ファンだったという。これはまだ可愛い武勇伝だが、芸能界入りして「癒し系」「やすらぎ系」のタレントとして人気者になってからも、かつてイジめられたという人がそれをテレビ誌の読者欄で告発したりしていた。
恋愛関係では、木村一八とつきあい、破局後、ロックバンド・TUBEの前田亘輝と結婚。ミニスカのウエディングドレスがいかにも元ヤン風だった。ただ、4年後に離婚して、ホストに入れあげたあと、会社経営者と再婚。来年1月公開の映画「太陽の家」では主役の長渕剛の妻を演じ、夫を平手打ちする場面もあったりと、イメージは51歳の今も健在だが、失速した印象は否めない。
同時期に世に出て「W飯島」として並び称された飯島愛も、タイプは違うが元ヤンである。セクシーアイドルとしてブレイクしたあと、2000年に出版した『プラトニックセックス』のなかで、不良経験を告白。
「深夜徘徊、ドラッグ、売春、夜の歌舞伎町にはあらゆる非行への誘惑があった。倫理やモラルを押しつける大人たちや世間がたまらなく嘘くさくてうっとうしかった」
などと赤裸々に綴り、こちらはメンヘラ系の女子から高い支持を受けた。病気を理由に引退し、翌年、36歳で亡くなってしまったが、彼女のようなヤンキー系女性アイドルはその後、出現していない。
そして、このふたりのあと、こうした路線の芸能人は小粒化していった。
たとえば、鈴木紗理奈の場合、子供の頃に「ターミネーター」を観て自衛隊に憧れたとか、好きなタイプは「革命家」とか、若手俳優ふたりのケンカを体を張って止めた(服を脱ぎ「お前らケンカすんな! とりあえず私の胸を見ろ」と叫んだらしい)など、面白いネタの宝庫だったりする。が、ネタとして消費され、アイドル的な共感や支持にはさほどつながらなかった。
また、あびる優にいたっては、集団での倉庫荒らしという「犯罪」を悪びれることもなくネタとしてテレビで告白。テレビ局が謝罪する事態となってしまった。