接種者計1323人(女性1112人、男性211人、年齢中央値は28歳<(10-65歳>))に対して、2734回のHPVワクチン接種を行っており、接種者に占める中国人の割合は2016年0%から2017年46 %、2018年65 %、2019年73 %へと増加していました。なお、中国人の在留目的は留学(500人)、医療ツーリズム(201人)、就労(139人)と留学が最も多いこともわかりました。日本人のHPVワクチン接種が伸び悩む一方で、ガーダシル9の接種を希望する中国人女性が急増しているのです。

 中国人のガーダシル9の接種希望者にとっては、HPVワクチンは接種して当然のもの。中国でワクチンを接種するのは心配だ、中国では希望しても数が足りず接種できない、26歳以上だから中国では接種できない、日本に留学中だから、といった理由で、日本での接種を希望して来られます。理由を聞くと、「接種するものでしょ、どうして理由なんか聞くの?」と言われたことや、「日本人はどうして接種しないの」と聞き返されたことさえあります。

 ガーダシル9の接種を希望する中国人女性が急増している一方で、日本人のHPVワクチン接種が伸び悩んでいます。HPVワクチンの効果と副作用についての正しい情報が、届くべき世代の男女に届くことを願っています。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。

著者プロフィールを見る
山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

山本佳奈の記事一覧はこちら