「ひざの関節は、ふとももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)がつながり、その上にお皿の骨(膝蓋骨)がかぶさった構造をしています。ひざ関節の変形は加齢によって増加し、65歳以上の高齢者の約半数にみられる所見です。その初発のものはおもに二つのタイプに分けられます。


 一つ目はふとももとすねの間の変形、二つ目はふとももとお皿の間の変形です。さらに関節の間のクッションの役目を担う半月板も一緒に痛めているケースもあります。痛みが出たら、薬物療法とともに適切なリハビリ療法が必要となりますが、そのやり方は二つのタイプで異なります。自己流の筋トレは、症状を悪化させるリスクがあるので控えましょう」

 X線とMRI検査により、山本さんの変形性膝関節症は、ふとももとお皿の間のほうに異常が強くみられました。このような場合に重りの負荷をかけたトレーニングをおこなうと、ふとももの骨とお皿の骨がこすれ合い、かえって痛みが悪化しやすいのです。土屋医師は山本さんにすぐにこのトレーニングを中止して、正しいリハビリを受けるよう指導しました。4週間続けたところ、ひざの痛みが消失し、問題なく歩行できるようになりました。

「変形性膝関節症を進行させないために効果があるのは、『体重管理』と『運動』の二つです。専門医の指導のもと、適切な運動療法をおこなうことをおすすめします。また、中高年の女性では、半月板が特殊な切れ方をする病気である内(ない)側半月板後根断裂が変形性膝関節症と誤診されるケースもあり要注意。鋭い痛みがあれば、ひざの専門医を受診しましょう」(土屋医師)

(文/坂井由美)

(監修)
昭和大学スポーツ運動科学研究所
昭和大学藤が丘病院 整形外科 准教授
西中直也医師

船橋整形外科病院
副院長 土屋明弘医師

※週刊朝日ムック『首腰ひざのいい病院2020』から

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