■二日酔いには「迎え酒」が効くのは、本当か?

 二日酔いの症状は血中アルコール濃度が低くなった時に一番ひどくなるといわれる。だから、洋の東西を問わず、「迎え酒」が二日酔いに効くという意見がある。

 たしかに「迎え酒」で二日酔いの症状は緩和されるようだが、それは問題を先送りにしているだけ、という側面もある。また、朝からの飲酒は社会的にも許容されないし、そのような飲酒を続けていては他の健康問題が生じるだろう。だから、この方法はおすすめできない。

 ちなみに辞書で調べてみたら、英語で「迎え酒」は「hair of the dog」というそうだ。犬に噛まれたらその犬の毛を取って傷口に塗ると治る、という迷信が語源なのだとか。

 二日酔いの予防や治療に有効な医療のエビデンスはほとんどない。これだけ医学が進歩しているのに、不思議な話だ。

 漢方の世界では五苓散や黄連解毒湯がしばしば二日酔いの予防や治療に使われる。漢方関係の学会に行くと、「今夜はみんなで飲みに行くから、とりあえず五苓散飲んでおこう」みたいな話になる。

 しかしながら、五苓散にしても黄連解毒湯にしても、きちんとした臨床試験で治療や予防効果を示したものはない。ぼくはこの検証実験、ぜひ自分でやってみたいのだが。神戸大学の学生からボランティアを募ってやってみようか。

 最近出た総説では、生薬の葛の根(葛根)や呉茱萸、生姜などが二日酔いに効果があるのでは、と論じられている。果物の梨、マンゴー、柿、野菜のアスパラガスなどに効果があるという説もある。

 ただし、いずれも臨床的なデータは希薄だ(Wang F et al. Molecules. 2016 Jan 7;21(1):64)。ほかにもいろいろな植物などが二日酔いに効く(かも)と列挙されているが、候補がすごく多いというのは「これといったものがない」という証左なのだ。

 また、日本ではウコン(ターメリック)が二日酔いに効くという意見があり、薬局やコンビニでウコン入りドリンクが売られている。しかし、ウコンが二日酔いに効くことを示した臨床試験はぼくが探した限りでは皆無だった。おそらくはプラシーボ効果(薬効はないんだけど気分的に効いたような気がすると、本当に少し効果が出てしまう)のではないかと推測している。

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