大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 ネットでの宣伝などを見て、「アトピー性皮膚炎に効く化粧品」を購入する患者さんがいます。患者さんからの「先生、アトピーに効く化粧品ってどう思いますか?」という問いに対し、皮膚科医は……。著書『心にしみる皮膚の話』が好評発売中の京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が、問題点を解説します。

*  *  *

「先生、アトピーに効く化粧品ってどう思いますか?」

 今から10年ほど前、とある患者さんから直接相談を受けました。

「ネットではアトピーに効くと評判です」

「そもそも化粧品が病気に効くと宣伝する時点で薬事法違反なんですよ」

「そうなんですか、知らなかったです。でも先生、ステロイドも入ってないみたいですし、値段は高いですが口コミの評価も高いです」

 うーん、これはちょっとまずいんじゃないかな。私は瞬間的に思いました。とにかくいろいろと問題がありすぎる。

 今回は、定期的に事件化する「ステロイド混入化粧品」のお話をしたいと思います。

「ステロイドは入っていません」のうたい文句で、実際は最強クラスのステロイドが混ぜられている化粧品は数年ごとに事件化します。アトピーの方だけでなく、乳児湿疹などを持つお子さんも狙われる薬事法違反の化粧品。十分に注意が必要です。

 まずみなさん、化粧品が病気に効くと宣伝したら違法なのはご存じでしょうか?

 薬事法では化粧品を以下のように規定しています。

「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」

 最後の一文に注目してください。「人体に対する作用が緩和なもの」が化粧品であって、皮膚の病気を劇的に治してしまうのは、それは医薬品と同じなのです。

 一方、化粧品でも効能の記載が認められています。現在、56個の効能が記載可能で、例えば「皮膚の乾燥を防ぐ」は実際に効果が確認されていればOKですが、冒頭の「アトピーに効く」は完全にアウトです。

 次に、ネットの口コミですが「アトピーに効く化粧品」に関しては、販売会社の関係者(いわゆるサクラ)が記載したものであると、薬事法違反の事件から明らかとなっています。

 ネットでの宣伝や口コミを見て、「アトピーに効く化粧品」を購入し使用した何人かの患者さんからお話を聞く機会もありました。なんと、アトピーに効くとうたう化粧品は本当にアトピー患者さんに効いていました。

 そして「化粧品なのに効いて怖い」という声もありました。

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化粧品に最強クラスのステロイドが