Q ヘッドホンの種類によって難聴リスクに違いはある?

A 難聴リスクを高めるのは鼓膜面上の音圧と時間

 音楽やラジオを聴くためのヘッドホンやイヤホンには、耳介も包んでしまうイヤーマフ型ヘッドホンや耳穴の中に押し込むタイプのインサート型イヤホンなど、さまざまな種類があります。耳の形や耳の穴の形は人によって違うため、それらが耳にぴったりフィットする人とそうでもない人がいます。

 密閉式のインサート型イヤホンが耳の穴にぴったりはまる人だと密閉されて音がもれずに鼓膜にダイレクトに届くため、鼓膜面上の音圧が高まりやすく、難聴リスクは高くなるので注意が必要です。難聴リスクという意味では、個々人の鼓膜面上への音圧と聴取時間が重要であり、一概にどのタイプのヘッドホンやイヤホンならリスクが少ないとは言い切れません。

Q 特定の高さの音だけが聞きにくくなることはある?

A 騒音性難聴の初期は一部の高音域が聞きにくい

 スマートフォンによる大音量・長時間の音楽聴取のみならず、なんらかの音(騒音)を断続的に聞きすぎれば、騒音性難聴のリスクは高まります。騒音性難聴では最初に一部の高音域において聴力損失を生じます。とはいえ、この初期の段階では会話の聞き取りにはほとんど影響がないため、難聴に気づきにくいという特徴があります。

 これに対して音を聞かなさすぎの場合、難聴などの内耳の機能低下は起こしませんが、脳への刺激が減るために認知機能は低下しやすくなります。

Q 悪天候や飛行機で体調が悪くなるのは耳のせい?

A 気象病の原因は内耳のセンサーの興奮

 飛行機の離発着時やスキューバダイビング、エレベーターで耳がツーンと痛んだり、聞こえが悪く感じたりするのは、気圧の変化による中耳の圧変化、それに伴う鼓膜の伸展による症状です。多くの場合、つばをのんだりあくびをしたりして「耳抜き」ができれば症状は消失します。ただ、風邪やアレルギー性鼻炎などで耳管の機能が不良だと、航空性中耳炎のほか、外リンパ瘻(ろう)をきたす場合もあり、難聴や耳鳴り、めまいなどを起こします。

 低気圧や台風の到来による頭痛、肩こり、めまい、耳鳴り、関節痛などの体調不良、いわゆる「気象病」も、最新の研究では、気圧の変化に伴って内耳にある「気圧センサー」が過剰反応し、脳への刺激により自律神経が乱れるためと考えられています。

Q 耳のマッサージは効果あり?

A 科学的根拠はないが精神面でプラス効果も

 低気圧や台風が近づくとめまいや頭痛、耳鳴りなどの症状が出る「気象病」に悩む人は少なくありません。耳周りをマッサージすると気圧センサーのある内耳の血流やリンパの流れがよくなり、予防や改善に有効という意見もありますが、科学的根拠はいまのところありません。

 ただ、めまいや耳鳴りなどの不調は、精神面にも大きく影響し、プラセボ(偽薬)の服用で改善がみられる場合もあり、マッサージでも症状の緩和がみられる可能性があります。

(文・石川美香子)

※週刊朝日ムック『「よく聞こえない」ときの耳の本[2020年版]』から一部抜粋