重度の熱中症では、意識障害、けいれん、手足の運動障害、おかしな言動や行動などがみられます。III度熱中症とも言います。この時、体はとても熱いです。肝臓や腎臓などに障害が起きてしまうと、最悪死に至ります。

 初期症状の段階で、涼しい場所に移動し、水分や塩分補給を適切に行えば、重症化することはありません。しかしながら、意識がもうろうとしている、呼びかけても反応がない、といった重症のときは、救急車を呼ぶ必要があります。待っている間も衣類を脱がせて、氷のうで首やわきの下、太ももの付け根を冷やしたり、皮膚に水をかけてうちわや扇風機などで仰いだりして、全身の体温を下げることが大切です。熱中症で最も重要なのは、体を冷やすこと。そして、水分や塩分を補給することです。 

 6月末、欧州各地では、アフリカのサハラ砂漠からの熱波により記録的な暑さであると報じられました。6月26日には、ドイツやチェコ、ポーランドで最高38度を超え、28日にはフランス南部で45.9度を記録しました。2003年にも熱波が欧州を襲いました。猛暑によりフランスでは、推計約15,000人が死亡したと世界保健機関は報告しています。

 世界的に権威のあるNEJMという医学誌でも、2019年6月20日付けで熱中症についての記事が掲載されました。「熱波を引き起こす地球規模の温度上昇と都心部のヒートアイランドは、熱中症の主要な外的要因であり、米国国立気象局によると、熱波は他の異常気象よりも多くの人々を死に至らしめる」と書かれています。

 さらに、近年、米国の高校フットボール選手と軍人における疫学調査により、「労作性熱中症」やそれに伴った死亡率が増加していることが指摘されています。アスリートや労働者(消防士、農業労働者、工場や工事現場の作業者など)、兵士など健康な若者に最も多く、仲間やコーチからの動機付けやプレッシャーなどは、生理的な能力を超えて行動することを促すため、労作性熱中症の危険因子です。さらに、音楽フェスなどのイベントでのアルコールも、労作性熱中症の危険因子です。

 まだまだ、夏本番。甲子園のほか、さまざまなスポーツ大会や音楽フェス、花火大会など楽しいイベントが盛りだくさんだと思います。暑さを避け、水分や塩分補給をこまめに行い、熱中症対策を忘れないでくださいね。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?