日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「熱中症の予防と対処法」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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梅雨寒だった今年の梅雨。関東甲信地方では例年より30日遅い7月29日に、近畿地方では例年より15日遅い7月24日に梅雨明けが発表されました。梅雨が明けたかと思ったら、いきなり夏本番。30度を上回る日が続き、8月2日には、今年最多の236地点で35度を超える猛暑日を記録しました。
このような急な気温の上昇に、身体がついていかないという方も多いのではないでしょうか。
7月28日の夜、大阪の枚方市にある「ひらかたパーク」で、着ぐるみをかぶりショーの練習をしていた28歳男性が熱中症で死亡したと報じられました。
また、8月2日にはJR東日本の運転士が病院に搬送されという報道もありました。JR羽越線の30代の運転士が午後1時ごろ、手のしびれや高熱やおびただしい発汗を認め、これ以上運転ができないと判断しSOSを発したそうです。運転席は直射日光が当たるため、冷房が効いていても暑いが、水を飲んでいたという苦情が寄せられるため、水分補給したいと思っても我慢してしまうのだそうです。
消防庁の発表によると、7月29日~8月4日の全国の熱中症による救急搬送人員は18,347人。そのうち、高齢者が54.3%(9,963人)を占めており、ついで成人が35.3%(6,474人)でした。発生場所としては、住居が41.0%(7,525人)と最も多く、ついで道路が17.1%(3,132人)、道路工事現場や工場・作業所などの仕事場が11.5%(2,102人)でした。
気温が次第に高くなる5月ごろから、私たちの体では、血流が増えて汗が出やすくなることで、体内の熱を放出できるように変化していきます。夏の暑さに適応できるようにするためです。しかしながら、今年の梅雨は肌寒い日が続いたため、これらの変化が不十分な人が多いと考えられます。実際、7月15日~7月28日の全国の熱中症による救急搬送人員は5,664人であり、翌週に約3倍増加と、梅雨明けと同時に急増していることがわかります。
厚生労働省の「熱中症による死亡者数(人口動態統計)」によると、2018年の6月~9月の熱中症による死亡者数(概数)は1518人で、猛暑だった2017年の年間の熱中症による死亡者数の635人を大幅に超えています。今年は急激に暑くなっており、油断はできないと言えそうです。
そこで、今回は要注意の「熱中症」についてお話ししたいと思います。