「業者に連絡をとって削除依頼したら、すぐに消してもらえました。撮影した人が意図的に流出させたわけではないと信じたいですが、やはり不信感は生まれてしまいます」

 撮影画像が出会い系サイトなどに悪用されてしまうのは、一義的には業者のモラルの問題だ。だが、事前のルールづくりによって、悪用を抑制できる可能性もある。馬場弁護士は言う。

「SNSといっても、インスタグラムの画像は特別なアプリでも使用しない限りはダウンロードできない。逆にフェイスブックの画像データは閲覧権限さえあれば誰でもダウンロード可能です。ダウンロード可能な状態でネットにアップされれば、無限に複製されてもおかしくない。事前に『インスタはOKだが、フェイスブックはNG』など細かく指定すれば、若干の抑止効果は見込めると思います」

 紗季さんは、一対一での撮影に応じる、いわゆる「個撮」の仕事も受けている。その際、過剰に透けた衣装や面積が極端に小さい水着を着てほしいと言われたり、「もっとお尻を突き出すような格好をして」などきわどいポーズを要求されたりしたこともあるという。また、ローアングルからの撮影が禁止されているのにあえて狙ったり、わざとわきにまわって水着の隙間が見えるような角度で撮影しようとしてくる人もいる。

「私はできないことはやんわりと断るようにしているので、それ以上の被害はありません。でも、相手(撮影者)を不機嫌にさせたくないと思ってしまい、ただ我慢している子もいます」(紗季さん)

 こうした行為について、馬場弁護士は「肖像権の問題以前に、民法上の不法行為になり得る」と解説する。

「故意、または過失でも他人に迷惑をかけて、それが重大であると判断される場合は、損害賠償請求の対象や名誉毀損になり得ます。例えば、水着の隙間などの写真はモデルにとって『撮られたくない写真』であることは明白。それを故意に撮影したり、どこかに公開したりすれば、モデルが迷惑だと感じている行為をあえて行っていると判断できるので、不法行為に該当する場合があると考えられます」

 せっかく撮った人物写真がトラブルの“火種”とならないためにも、最低限のルールだけはしっかりと理解しておきたい。

取材・文 =作田裕史(アサヒカメラ編集部)

※アサヒカメラ2019年8月号より抜粋