まさかの南北協調による戦後賠償問題の解決というシナリオに、日本に有効な一手はあるのか。だが、複雑な国際政治のパワーゲームに“外交素人”の経産省が適切に対応できるのかは心もとない。外務省の元幹部は「官僚は自分の専門以外のことに口を出してはいけない。経産省が外務省の仕事をして国益を損なったとき、責任を取るつもりはあるのか」と憤る。

 前出の服部氏は、こう話す。

「米朝の交渉は、順調に交渉が進めば9月末にも首脳会談が開催される可能性があります。金正恩は日本とのコンタクトは否定していませんが、日朝会談が実現すれば、韓国も協調して戦後賠償の問題を強く求めることも考えているでしょう。日本は『前提条件なしで交渉を』と言っていますが、金正恩は会談実現に前提条件をつけるはずです」

 安倍政権は強気の姿勢を崩していないが、振り上げた拳をどのように動かして日本の国益を守るのか。戦略が問われている。

(AERA dot.編集部/西岡千史)