2012~2013年に中国1部・杭州緑城に赴いた岡田武史監督が「スタッフの査定とか体育局との打ち合わせなど現場以外の仕事が多くて、日本で指導していた時の倍は働いている。日本の常識が通じないことも多い」とこぼしたのは、1つの典型例。2016~2017年にかけて日本サッカー協会の指導者派遣事業で赴いたチャイニーズ・タイペイで代表監督を務めた元滝川第二高校の黒田和生氏も「『2017年夏に海外遠征に行ったらどうか』という話がその年の頭に持ち上がり、計画を立てていたところ、数カ月後に協会の上層部スタッフから『予算がつかないからダメ』といきなり言われました。計画が浮かんでは消えるのが、この国の日常的な姿。何かを始めても継続性がないし、『検証・分析・実行』という日本サッカー界で行われている当たり前のことができていない。これには頭を悩まされました」と苦渋の表情を浮かべていたことがある。

 こういった状況は中国やチャイニーズ・タイペイに限った話ではなく、アジアではよくあること。ベトナムの三浦監督や今年からシンガポール代表監督に就任した元柏レイソルの吉田達磨監督も似たような状況に直面しているはずだ。

 Jリーグ時代に柏、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸、名古屋グランパスという資金的にも環境面でも恵まれたクラブで働き、日本代表というサポート体制万全なチームで仕事をしてきた西野監督にしてみれば、タイという未知なる国でショッキングな出来事に直面することは想像に難くない。自身を招へいしてくれたソムヨット会長でさえも、旗色が悪くなければ西野監督を突き放すことも考えられるし、協会内に反対派が出現する可能性もゼロではないだろう。

 そういった中、仕事を全うしようと思うなら、やはり信頼の置けるスタッフを周りに固めることが肝要だ。自身の意思を的確に伝えてくれる通訳はもちろんのこと、協会や現場との風通しをよくしてくれるサポートスタッフを配置することも必要不可欠ではないか。

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西野氏にとってもラストチャンスかも