仙台の人たちの熱さと強さを力にしたい

「アメリカは球場ごとに雰囲気がまったく異なる。ニューヨークは試合途中からほとんど試合を見ない人が多かった。LAではビーチボールを飛ばしたり踊ったり、各自が目立って楽しむような感じ。アトランタは球場が1つになって選手を応援する雰囲気があった」

「日本でもヤクルトには傘があった。西武ではみんなが旗を振っていた。グラウンドから見ても、多くのファンがいるように感じる。こんなにたくさんの人たちが応援してくれている、と選手は心強く思えるものなんです」

 東京、所沢、ロサンゼルス、ニューヨーク。日米さまざまな場所でプレーした石井GMは、雰囲気の違いを身をもって経験してきた。その中でアトランタのような一体感を必要と感じた。そして仙台へやってきた。

「これはあくまで僕の感じ方ですが、仙台の人たちは芯は本当に熱いんだけど、それを表立って見せないような印象。実際はそうじゃないだろうけど、一見すると大人しそうなイメージがある。だからこそ球場や応援団が先導して一体感を作り出せれば、ものすごいパワーを出すことができると思う。そのためにやれることは全部やりたい」

「アトランタやクリーブランドみたいに、大型太鼓を設置してそれに合わせてトマホークチョップをやるのも良い。楽天生命パークの大きな名物であり、武器にしていきたい。トマホークチョップのグッズなんかも面白いですね」

 楽天は若い球団だ。

 2004年の球団創設時から、リアルタイムでともに歩み、年齢を重ね、成長してきた人たちも多い。応援歌のフレーズとともに心に刻まれたシーンもあるだろう。

 ファンにとっての応援問題は、決して小さなことではない。様々な意見があるのは当然だ。著作権問題など、多くの事情が多岐に及ぶ場合もある。しかし楽天の応援体制は紛れもなく新しい一歩を踏み出した。それは球団史に刻まれ今後も生き続ける。

 応援の嗜好は人それぞれ。何が正しいかはわからない。鳴り物応援に対し、賛否両論があるのも当然。その中で答えを1つだけ出せるならば、応援にとって重要なのはチームの勝利につながることかどうか。楽天は今、究極の答えに向けて戦い続けている真っ最中だ。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。

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