メジャーリーグで大きな影響力をもつ代理人のスコット・ボラス氏 (c)朝日新聞社
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 メジャーリーグのクオリファイング・オファー(QO)はご存じだろうか?日本のプロ野球にはない制度のため、聞いたことはあるけれども詳しくは知らないという方もいるのではないかと思う。このメジャー独自のQOが、ここ数年で逆風にさらされている。

 まず初めに「QOとはなんぞや?」というところから簡単にご説明を。QOとは、シーズン終了後にフリーエージェント(FA)となる選手を対象に、元の所属球団が優先的に出せるオファーのこと。ただしいろいろと制限があり、契約期間は1年限りで、提示される年俸額はその年の上位125選手の平均額となる。ちなみに昨オフのQOの提示額は1790万ドルだった。

 だが、そもそもQOを受けるほどのFA選手ということは、そのオフのストーブリーグで目玉足り得る大物選手ということでもある。ならば1年契約のQOは拒否して複数年の大型契約を狙いにいくほうが選手としてはメリットが大きい。実際、昨年までにQOを提示された延べ80選手のうち、これを受け入れて残留したのはたったの6人しかいない。

 そしてこの制度の最大のボトルネックとなっているのが、QOを拒否したFA選手を他球団が獲得した際の元所属球団への補償だ。端的に説明すると、QO拒否選手を獲得した球団は翌年のドラフト指名権の一部を喪失する。

 何巡目の指名権を失うかは、その球団が前年にぜいたく税の基準を超えているかどうか、レベニューシェアリングを受ける側なのかそうでないかによって違いが発生し、おおむね2巡目から5巡目あたりの指名権を失うことになる。また海外の若手選手と契約できる契約金総額のインターナショナル・ボーナス・プールも最大で100万ドル分を削られることになっている。

 逆にQOを拒否された元所属球団には、該当のFA選手の新たな契約先や契約金額によって、翌年のドラフト指名権を獲得できる。上記のようにQOはFA選手にはほぼ拒否されるため、この補償を見越して流出を想定しつつQOを出すケースも多い(もちろん目論見から外れて選手が受諾するリスクもないわけではないが……)。

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大物も移籍先が決まらない…