だが選手側からすれば、これはたまったものではない。そもそもQOは選手側から提示を拒否できるものではないし、これを拒否することで本来ならば得られたかもしれない大型契約を結ぶ機会まで喪失しかねないからだ。さらに未契約状態が続けば、当然の帰結としてオープン戦や開幕後のレギュラーシーズンはもちろん、マイナーリーグの試合にすら出られない。すでにシーズンインから2カ月を経た他の選手に追いつくための実戦感覚を取り戻すのには相当の努力と時間を要すのは言うまでもないだろう。
昨オフにアストロズからのQOを拒否した元サイ・ヤング賞左腕ダラス・カイケル投手は、今年のドラフト直後にブレーブスと契約。マイナーで2試合登板後にメジャー合流したが、今季はこれまで3試合に先発して1勝2敗、防御率4.08という成績だ。特に最初の2試合は6イニングを投げ切れず、ブランクの影響は否めなかった。
昨季はレッドソックスの守護神としてワールドシリーズ制覇に貢献したクレイグ・キンブレル投手もQO拒否後に契約先が決まらず、今年のドラフト後にカブスと契約。こちらはマイナーで4試合登板後にメジャー昇格し、初戦こそ1回無失点でセーブを挙げたが、その後の2試合連続で打ち込まれ、現在まで防御率16.88と苦しんでいる。
そもそも成績もさることながら、やはりアスリートとして脂が乗る時期に活躍する機会を失ったという事実は重い。高騰する一方だったFA市場が冷え込んできた流れを読み切れなかったと言ってしまえばそれまでだが、ファンとしても彼らのような一流選手がシーズンを通じてプレーする姿を見られないというのは残念な思いもある。
そこで荒唐無稽、実現性皆無に等しいながらも提案するならば、QOを拒否して移籍先がオフに決まらなかった選手たちに日本の球団が手を差し伸べるというのはどうだろうか。それもシーズン開幕からMLBドラフト直前の5月末までの短期契約でだ。選手からすれば実戦感覚を錆びつかせずに済むメリットがあり、NPB球団からすれば彼らの足元を見ることで比較的低い年俸で大物選手の力を借りることができる。