同じ質問を繰り返していることに気づかないようでしたので、私は「質問に答えて下さらないですよね」と言いました。伸宏さんだけでなく、おそらく彩花さんもそんなことに気づかないほど切羽詰まっているのです。

 彩花さんは、

「質問に答えているつもりなんですけど……。質問は何でしたっけ?」

と聞き返します。

「伸宏さんは、こんな状態なので、論理的に話すことはできませんよね?」と繰り返すと、しばらく考えてから

「どう答えたらいいんでしょう?」

と聞かれるので、

「まずはYesかNoか、2択ならどうでしょう」と促してみます。

「……そうですね。そんな状態なら論理的には話せないかもしれませんね」

と彩花さんはおっしゃいました。「今、どんなことを感じていますか?」とお聞きすると、

「追い詰めるつもりなんかなかったんです。でも……、私どうしたらよかったんですか?」

とちょっと震えた声になってきました。

「何を恐れているんですか?」と聞いてみました。しばらくの沈黙の後、彩花さんはこう話しました。

「この人は一流の大学院卒で私なんか人前で名前を言えないような大学で、プロポーズされたときは天にも昇るほどうれしかったけど、いつかこの関係が壊れるんじゃないかと、不安だったような気がします。子どもができればよかったのかもしれませんが、結局、子どもには恵まれなかったので……」

 つまるところ彩花さんの心の中では、夫婦の関係で妻である自分が下なのです。そういう意識のままでは彩花さんにとって余りにも不安で苦しいので、無意識のうちに精一杯頑張って、マウントをとろうとしていたのです。現実の中では多少なりとも自分が上だという状態を作ることで、どうにか彩花さんの意識の中にある自分が下だという逃れ難い思いを中和できていたと考えることもできます。

 私は、彩花さんに促しました。

「伸宏さんに、『私のこと好き?』って聞いてください」

 彩花さんは、かなり躊躇しましたが、思いを決めて聞いてみました。

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「私、おかしいんでしょうか?」カウンセラーの答えは