ボランチとしての存在価値が日に日に高まっている柴崎だが、過去を振り返ってもこのポジションはなかなか世代交代が進まなかった。この10年間を見ても、2010年南アフリカワールドカップ16強の原動力となった遠藤保仁(G大阪)と長谷部誠(フランクフルト)の鉄板コンビが、2014年ブラジルワールドカップを経て、2015年アジアカップ(オーストラリア)まで君臨してきた。その後、遠藤が代表の第一線から離れ、長谷部が1人でリードする形になったが、最高のパートナーが見つからずに苦労した。「デュエル(局面でのバトル)」を重んじたヴァイッド・ハリルホジッチ監督(ナント)は山口蛍(神戸)や井手口陽介(グロイター・フュルト)らを好んだが、ロシア直前に指揮官となった西野朗監督はゲームメークに秀でた柴崎を抜擢。本番は長谷部と柴崎がいい連携を見せ、日本を16強へと導くことになった。

 この大舞台を最後に長谷部が代表から去り、森保ジャパンでは柴崎がリーダーの役割を引き継ぐ形になった。だが、所属のヘタフェで思うように出場機会を得られなかったことから、昨年9月の森保体制発足後は代表でのパフォーマンスにややバラつきが見られがちだった。今年1~2月の2019年アジアカップ(UAE)も遠藤航(シントトロイデン)とのコンビは計算できるものではあったが、柴崎自身のプレーはロシアの時ほど際立ってはいなかった。しかしながら、今回のコパアメリカではこれまでの停滞感を吹き飛ばすかのようにイキイキしている。キャプテンとして、中盤のリーダーとして力強くチームをけん引することに充実感を覚えている様子も見受けられる。

 チリ戦は中山雄太(ズウォレ)、ウルグアイ戦は板倉滉(フローニンゲン)と相棒が変わったが、試合ごとに新たなコンビネーションを構築する作業は、インテリジェンスの高い柴崎と言えども簡単ではないはずだ。実際、遠藤航の負傷によって塩谷司(アルアイン)がパートナーになったアジアカップ決勝・カタール戦(アブダビ)では2人の間にギャップが生まれ、その穴を相手に突かれることになった。本人も急造コンビの難しさを痛感したことだろう。

次のページ
相棒を育てるという意識は長谷部と一緒