ポッポの丘では常時、屋根の穴や雨どいを溶接し、雨漏りを防いだり、各部をパテで補修したりしています。車両の状態にもよりますが、塗装代も込みで、最低でも5年に一度は1両100万円かかると考えたほうがいいと思います。
この金額はポッポの丘が多数の車両を保持していることにより、継続的な仕事が見込めることで割り引かれている部分がありますから、個人の方が1両だけ保有する場合などは、もう少し高いのではないかと思われます。
それと、税金を忘れてはいけません。固定資産税として、買取価格+輸送費に対する課税が行われるのです。この辺りは自治体により扱いが変わるのですが、鉄道車両を「仮設住宅」としてもらえれば、税金が安くなります。一般の住宅と同じ扱いをされると、永続的な建物ということになり、継続的に税金が発生します。
ポッポの丘は法人なので、資産償却することで経費を抑えていますが、個人の方が保有されると大変なのではないでしょうか》
■地元の業者に頼まないとトラブルに
さらに、今回の取材を進める中で、村石社長と繋がりがある鉄道車両保存活動をされている方にも話を伺うことができた。
「私の場合、鉄道車両の解体を目撃して、いてもたってもいられない思いを抱いたことが、保存活動のきっかけです。その後鉄道趣味の集まりで、関係者の方と知り合いになり『お金と土地があれば、保存できる』という話を聞きまして。保存活動を進めるうちに、実績があるからと相手側から話が来る機会も増えました」
また、この方は匿名を条件に、実際の保存活動についても語ってくれた。
《どこから買った、何を保有しているということがトラブルになることがあるので、匿名はご容赦ください。保存における大きな注意点は、やはり「土地」です。鉄道車両は非常に重く、事前に地盤を固めるなどの対策をしないと、地盤沈下することもあります。車体に台車がなければ重量が分散するためそのまま置くこともできますが、台車がある場合は線路を敷く必要があります。
輸送日数が増えるごとに数十万円単位で必要資金が増えますし、運ぶ時、設置する時もクレーン車が必須で、最低でも数十万円はかかります。なお、超大型貨物となりますから、警察に道路使用許可を得る必要があり、当然時間もかかります。
また、地元業者を使わないと、トラブルが起こりやすい印象があります。私たちが関わった案件の平均でいうと、1両の保存には、輸送費だけで計300~500万円程度がかかっていますね。機関車は重いので、1000万円ほど必要でした。なお、今は東京五輪を控えて輸送費も高騰しています。