ただ、鉄道車両の保存は正直に申し上げて大変なことです。最低限の条件として「車両を展示するためのスペース」が必要です。その場所にトレーラーが入らないと、車両を搬入できませんから、都会では無理なのではないかと思います。
また、保存車両が仮に無償譲渡だとしても、輸送や設置には多額の費用がかかりますし、手間もかかります。大山ケーブルカー丹沢号の保存に際しては、「大山ケーブルカー丹沢号保存会」が設立され、まず現地から大山の麓までヘリコプターで車体を輸送し、そこからトラックに積み替えてポッポの丘に移動させました。その際、ヘリで運べるのが3.5tまでということで、5tの車体がフレームだけにバラされました。そこから復元しようとしていますが、元通りにするのに非常に手間取っている部分もありますね。
輸送経費ですが、鉄道車両の輸送にはトレーラーが必要です。これはレンタルで1日100万円かかります。長野や郡山の車両センターからポッポの丘に車両を輸送した際には、先導車や後導車も必要で、夜間通行しかできないため3日間を要しました。トレーラーのレンタル代で計300万円が、さらに設置するたの50~60tのクレーン車が2台、トータルで400万円かかりました。
最初に保存したいすみ200形を設置した時は、北陸からいすみ鉄道で活躍しているキハ52形を輸送した際の輸送車で運んでいただきましたが、いすみ鉄道国吉駅からポッポの丘までの9キロメートルを輸送するのに160万円くらいかかっています。
また、車両設置に伴い線路を敷設しなければなりません。ポッポの丘の場合は、JR外房線の浪花駅にあった側線のレールを譲っていただいたのですが、1mが4万円で、50m設置したので200万円が必要でした。これとは別に、線路の下に敷く砕石や鉄板も用意するため、諸経費を考慮すると、いすみ200形1両の設置に輸送費、車両費、線路設置費が各200万円くらい。計600万円くらいが必要でした。
色々と申し上げましたが、鉄道車両の輸送は「元々あった場所の条件」もあるので、「確実にいくら」と申し上げることは難しいです。
例えば銚子電気鉄道からデハ700形を輸送した際には、笠上黒生駅近くの踏切警報機などを一時外して対応しています。終電から始発までに作業を完了しなくてはならず、その配慮も必要でした。箱根登山鉄道のモハ2形をお預かりしていたこともありますが、これも積み出しが大変だったと聞いています。
また、注意が必要なのは車両の維持費です。鉄道車両は屋根と雨どいから痛みます。そうすると車両が変形するので、ガラスが割れてしまうのです。