こうして無事に保存できても、鋼鉄製の車両だと、さびとの戦いが待っています。さびを取り、パテ埋めしてペンキで塗装し直しますが、業者に依頼したときは、1両で200万円くらいでした。設置状態にもよりますが、もちろん固定資産税がかかるケースもありますよ》
このように、鉄道車両はなかなか安い買い物ではなさそうである。だが、前向きな話もある。ここ数年で、インターネットを介して募金を集める「クラウドファンディング」が注目を集めている。
直近では、2019年3月に、寝台特急「なは」で使われていた24系寝台車を、香川県善通寺市に輸送して宿泊施設にしたいという「岸井うどん」さんのクラウドファンディングがあった。
このクラウドファンディングは441名の支援者から965万円を集め、無事成立している。「岸井うどん」は元々ビニールハウスの店舗なのだが、そのノウハウを活かし、ビニールハウスで車両を覆うことで、風雨による痛みを避けて維持費を軽減する計画である。
このようなインターネットの普及により、かつてよりは鉄道車両の保存へのハードルが下がったことは確かである。ノウハウが交換されることで、貴重な産業遺産が後世に残される機会が増えるように、願ってやまない。(安藤昌季)
○安藤昌季(あんどう・まさき)1973年、東京都台東区生まれ。乗り物ライター兼編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表。「教えてあげる諸葛孔明」(角川ソフィア文庫)や「旅と鉄道」「鉄道ぴあ」など、歴史や乗り物記事の執筆・企画・イベントを多数手がける。