彼らだけではない。19歳で代表デビューし、エース級の働きを見せてきた香川真司も20代後半から繰り返しケガに悩まされているし、同じ19歳から日の丸を背負い続けてきた内田篤人も2014年ブラジルワールドカップ直前の右ひざ負傷から継続的にプレーできなくなってしまった。負担の大きい代表とクラブの掛け持ちが、10代の天才にとって必ずしもプラスに働くとは言い切れない部分があるのだ。

 久保の場合は段階を追って成長してここまで来たが、この先はどうなるか分からない。さしあたって次のコパ・アメリカ(ブラジル)でいきなり強度の上がる試合を強いられるし、その後は欧州移籍も噂される。少年時代から日本と欧州を行き来し、海外慣れしている選手だから、先人たちよりはその環境にスムーズに適応できるだろうが、疲労がたまってオーバートレーニング症候群に近い状態に陥ったり、集中力を欠いてケガをする可能性もゼロではない。そこは本当に注意しなければいけない点だ。

 キャリアの妨げになるのは、ケガだけではない。

「今後、海外に出て厳しい環境に行くと、監督のシステムに合わなかったりとか、うまくいかないことが絶対に出てくる。その中で彼がもう1つ上に行くためには、パーソナリティ、メンタルの部分がすごく大事になってくる」と海外経験約10年の長友がしみじみと語ったように、久保と言えどもつねに試合出場できる保証はない。それは彼自身、昨季のFC東京や横浜F・マリノスで経験しているが、出番を得るための壁は今後のプレー環境次第でもっと高くなることも考えられる。そこで焦燥感を抱いて伸び悩んだりすることもあり得るのだ。現時点での久保は18歳とは思えない強靭な精神力と、大人顔負けの大胆不敵さを誇っているが、それを持ち続けられるかどうかは本人次第というしかない。

 いずれにしても、過去の10代代表選手たちは辿ってきた道を回避することが、久保にとっての必須テーマ。「早熟の天才」で終わらないように、本人にはさらなる努力を払ってほしいし、周囲にもオーバートレーニング症候群やケガに陥らせないような配慮をしていってほしいものだ。(文・元川悦子)