そもそも、A代表が2つのシステム併用を目指すのなら、育成年代から確固たる方向性の下、訓練を積み重ねるような環境がなければ難しいのではないか。日本の場合、ポーランドでU-20ワールドカップを戦った影山雅永監督率いるU-20代表が4-4-2、フランスで開催中のトゥーロン国際トーナメントに参戦中のU-22日本代表が3-4-2-1、A代表が4-2-3-1というように、各年代の基本布陣がバラバラになっていて一貫性や継続性が乏しい。

 各監督にしてみれば「選手の特長に合わせたシステムを採用するのがベター」という考え方なのだろうが、少なくとも全カテゴリーが共通したコンセプトでやっていれば、A代表になって混乱することはないはず。代表活動の時間は年を追うごとに減少の一途を辿っているのだから、若年層から柔軟性や臨機応変さを養って、4バックでも3バックでも自在にできるような選手を数多く育てていかなければ、問題の抜本的解決にはならない。そこは改めて強調しておかなければならない点だ。

 森保監督が指揮しているA代表とU-22の2つの代表を取ってみても、前者は4-2-3-1からスタートし、後者は自分の得意な3-4-2-1から着手してきた。その理由を「U-22は自分がこれまで(広島で)やってきたことでベースを作り、そこからオプションとして4バックを試合中に試すということをやってきた。しかしA代表はロシアワールドカップで西野(朗)監督がやられたことが日本の選手に合っていると感じたので4バックから始めた。現段階でA代表のベースは4バックかなと思っています」と語ったが、アプローチの違いが混乱につながらないとも限らない。森保式3バックを完全に理解したU-22世代がA代表の中心になってカタールを迎えるような状況になればいいが、果たして今後はどうなるのか。懸念材料は山積していると言わざるを得ない。

「3バックに関してはチームとしてまだ答えが出ていない状態。これから見ていかないといけない。トレーニングの時間も少なかったし、やってみながらという感じだったので、細かいところまでは確認できていない」と柴崎も話したが、挑戦はここからが本番。いばらの道になる可能性もゼロではない。ザックジャパン時代と同じ結末にならないように、森保監督に最善の戦術浸透術を模索していってもらうしかない。(文・元川悦子)

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