武田の言葉というのにしみじみ触れたのは、この日が初めてだった。
それまでの武田についての知識は、NHKの「みんなで筋肉体操」が大評判になり、昨年末の紅白歌合戦では「筋肉体操」のメンバーと共に天童よしみの横で腕立て伏せをしまくり、途中からはサックスを吹きまくったーーというようなもので、時々にその姿を見たり、聞いたりはしていた。
が、身体にぴったり張り付くシャツに短パンで、筋肉を鍛える武田を見るにつけ、「僕、ナルシシストです」という心の叫びがダダもれているようで、お近づきになる気にはならなかった。それがこの日、初めて「語る武田」に接し、独自の言葉を駆使してのトークに認識を改めた。
「(走って)つらくなってきたら、これは自分が作り出したイリュージョン、そう思おうとしています」
「(体力の限界まで追い込むことを)できる自分に達成感を感じて、今日も眠るわけですよ」などなど。
遠い昔、「あったま、ばかりでも、かっらだ、ばかりでも、ダメよね」という確かヨーグルトのコマーシャルがあったのだが、頭だけでも身体だけでもない、ちゃんとした人なんだなと小さく感動してしまい、『優雅な肉体が最高の復讐である。』という5年前に出された本まで購入したという次第だ。
ちなみにこの本、身体を動かすための入門書としても役に立つ(何しろ縄跳びを買う気にさせられた)し、彼の半生と哲学にも納得させられる好著だ。「ラン×スマ」で感動した運動哲学トークのいくつかプラスαがたくさん書かれていて、昨日今日の思いつきではないこともよくわかった。
が、なぜ「優雅な肉体」が「最高の復讐」なのか。それだけは、最後まで読んでもわからない。彼の上半身裸のモノクロ写真の表紙と共に、「武田って人は自分好きなのだろうなー」というイメージに訴えかけ、そこから読ませると意外と骨太な武田がいる。そんなギャップ萌えで売ろうという作戦だろうか。まあ、それはさておきなのだが。