開業している歯科医師仲間と、「どんな歯科衛生士に来てほしいか」という話をすることがよくありますが、「美人がいいね」という意見を聞いたことはあまりありません(中には美人が絶対条件になっている歯科医師もいると思いますが少数派です)。

 もちろん、患者さんに優しく、笑顔で対応できるコミュニケーション能力とホスピタリティーは歯科衛生士に必要な要素です。そうした意味で、

「笑顔がすてきな人が来てほしいね」という話はよく出ますが、それは美人とは意味合いが違います。美人でも冷たい態度をとられたら、患者さんはいい気分にはならないでしょう。大事なのは内面です。

 歯科医院に来る患者さんは、たいていの場合、痛みや不快な症状が我慢できず、「もう、限界」というところで受診にやってきます。

 だからこそ、患者さんの心に寄り添うことのできる優しさが必要なのです。

 このような理由から、歯科衛生士の年齢ももちろん、関係ないと思っています。

「歯科衛生士は若いほうがいい」「若い歯科衛生士のほうが、患者さんのうけがいい」と考える院長もいるようです(これもまた、歯科衛生士が現場を離れ、復帰できない理由の一つであると考えられます)。しかし、若い歯科衛生士ばかりの歯科医院は、ベテランが少ない歯科医院です。どちらが患者さんのためになるかは明らかでしょう。

 真剣に治療に取り組んでいる歯科医師がパートナーとなる歯科衛生士に求めるのは、患者さんを一生懸命、処置したいという熱意とスキルです。これは矯正治療やインプラントなど、どの専門分野の歯科医師も同じだと思います。

 もっとも、顔や年齢で歯科衛生士を選ぶような院長は年々、減っていくでしょう。患者さん側も、この点は同じではないでしょうか。

 やる気や実力のある歯科衛生士が気持ちよく働くことのできる環境が広く実現してほしいと願うばかりです。

○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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