元祖ハンサム、草刈正雄 (c)朝日新聞社
元祖ハンサム、草刈正雄 (c)朝日新聞社
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矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』

 草刈正雄が「なつぞら」で、シャケの骨を口から出していた。5月16日だった。感動した。すごいと思った。という話を書きたい。

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 そもそも「なつぞら」は朝ドラ100作目ということで、始まる前からNHKがものすごく力を入れていた。広瀬すずが主演だと2017年11月に発表して、これは99作目「まんぷく」のヒロインが安藤サクラだと発表されるより2カ月以上も前だった。広瀬の母親役の松嶋菜々子を始め、歴代の朝ドラヒロインを多数ブッキング、その中にはあの「おしん」の子役だった小林綾子も含まれていて、話題作りのための仕掛けすごいなあ、と見ていた。

 いざ放送が始まった4月、話題をさらったのは広瀬より松嶋より、草刈だった。ヒロインなつのおじいさんの泰樹がいきなり名台詞を連発、ネットでは「アルプスの少女ハイジ」に重ねて「草刈おんじ」などと呼ばれるようになった。

 5月17日の41話も草刈が熱い演技を見せていたから、午前9時には「『なつぞら』またもネット号泣 なつの告白に草刈おんじ涙」(スポニチアネックス)とニュースになっていた。が、個人的にはその前日のシャケの草刈の方にそそられたのだが、その前にざっくり展開を説明する。

 なつは泰樹のいる柴田家に引き取られた元戦災孤児で、酪農高校の3年生。アニメーターになりたくて、卒業後は東京に行きたい。だがそれでは育ててくれた家族、中でも泰樹への恩が返せない。悩めるなつ。

 当初から「十勝から東京でアニメーターを目指す女性がヒロイン」と発表されていたので東京行きはわかっているのだが、なつと、なつを見込んで酪農を教えてきた泰樹の心情がどちらも理解できて、ハラハラさせられる。とうとう41話で、東京に行きたいのは「漫画映画を作りたい」からだとなつが打ち明けた。それまでは柴田家への遠慮から「本当の兄がいるから」東京に行くと嘘をついていたのだ。

「挑戦してみたいのさ。じいちゃんが1人で北海道に来たみたいに。それが私には漫画映画を目指すことなのさ」

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ネットが泣いた日