相当はしょったが、なつが心情を切々と語った。泰樹がこう答えた。
「よく言った。それでこそ、わしの孫じゃ。行って来い。漫画か映画か知らんが、行って、東京を耕してこい。開拓してこい」
草刈は涙を見せる熱演。そんなこんなで「ネット号泣」と相成った。と、ここまでたどり着いたところで、シャケの話へ移る。
冒頭にも書いたがそれは16日で、つまりネットが泣いた前日だった。まだなつは「兄がいるから」東京に行きたいとしか言ってなく、しかもそれを聞いた泰樹は「出てけー」と怒鳴ってしまう。詳細は省くが、なつにそう思わせたのは自分だと後悔もしている。
そこで登場するのが、とよ(高畑淳子)という菓子店「雪月」の元店主。泰樹が正直になれる唯一の相手だから、なつの話をして孫が東京に菓子修業に行くなら一緒に連れていってくれと頼む。うまさが際立つ2人のやりとり。シャケが出てくるのは、自宅に戻ってからの食事の場面だった。
故あってなのだが、柴田家の長男が石狩鍋に牛乳を注ぐ。鍋がアップになってシャケや野菜が映り、次に食べている泰樹が引き気味で映る。箸を置いた泰樹がやおら、「なつ」と呼びかける。そして次に、すっと泰樹が指を口に入れ何かを取り出す。手元の小皿にそれを置く泰樹。石狩鍋でこの動き、シャケの骨に違いない。そう思った。感動した。
感動の意味をわかっていただくため、全くの素人だが素人なりにここでの芝居を解説していく。骨を取り出すという動きはあまりカッコよくないというのを前提にしている。
そもそも台本に「泰樹、シャケの骨を取り出す」と書いてあるはずはなく、演じていたら偶然、骨が口に残ったと考えるのが妥当だろう。そうだとして、ここから先の草刈の判断はいくつか考えられる。
骨を口に入れたまま演技を続けることが一つ目。二つ目は思わず口から出してしまったとして、出した瞬間に、「すいません」とか何とか言って撮り直してもらう。三つ目が、骨を出した後も演技を続けるという判断。草刈はそのまま「おまえのことは、雪月のばあさんに頼んでおいた」と台詞を言ったから、三つ目だったとしておく。