そもそも「おっさんずラブ」はラブコメだ。キュートなおもしろエピソードを積み重ね、「男と男」の恋心を描いた。「ゲイへの偏見なんてないよね」という空気が全体に流れていて、そこが心地よかった。だから女性視聴者に大人気になった。

 吉田鋼太郎が可愛かった。シェークスピア芝居の常連が、「はるたんが好きどぇーす」と叫ぶギャップ。2人のゲイに愛され、徐々に気持ちが揺れるストレートのはるたんを田中圭が、これまた可愛く演じていた。カラッと笑える明るいドラマを楽しめばよい。

 と、わかってはいるのだけど、ストレートがゲイを好きになっていくのは簡単なことではないんじゃないかなー。という疑問が、ずっと払拭できなかった。ゲイ2人は、いずれも家事能力が高い男性だった。家事能力と愛の交換?

「おっさんずラブ」という賑やかなお祭りの後にくる、静かな日常が「きのう何食べた?」なのだと思う。祭りがなければ、日常はない。祭りへのリスペクトを込めて、その先のゲイの恋愛模様を描く。ゲイをめぐるいろいろなことを俯瞰して、その上で2人の日々を描く。だから納得して見ていられる。

 初回、内野が演じる美容師ケンジは、勤務するサロンの常連マダム(MEGUMI)に口説かれる。ケンジはそれを断るために、自分には一緒に暮らす彼がいて、弁護士でとてもカッコよくて、とのろける。そしてマダムの耳元に近づいて、小さい声で「でも、僕が男なんですよ」。そう付け加えた。

 弁護士のシロさんを演じるのが西島だ。確かにとてもカッコいい。ケンジと2人で歩いていて、偶然マダムと遭遇、「あなたが彼ね、女役なのね」と言われる。カミングアウトしていないシロさんは部屋に帰り、猛然とケンジに抗議する。

「女役って、俺はタチネコで言ったらネコってくらいで……」と言いかけて、「俺の行動スタンスを理解できないなら、この部屋から出て行け」

 ここからのケンジがとてもよい。「ごめん、ごめん。でも、うちの店の店長はお客さんに自分の奥さんや子どもの話、するよ。なんで俺だけ一緒に住んでる人の話を、誰にもしちゃいけないの?」。そう言って、えーんえーんと泣く。えっえっと嗚咽を漏らす。

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坂本龍馬を好演した内野