うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や3歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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子どもを育てていくうえで、欠かせないアイテムである絵本。今回は、そんな絵本の中でも、親の役に立つものを紹介したいと思います。
タイトルは、『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』。子どもを「たった10分で、寝かしつけ!」られる、という衝撃的なキャッチコピーで話題になりました。
■子どもに睡眠術をかけていくような手法
夜までぎゃあぎゃあ騒いでいる子どもが、寝るときに抱っこもナシで、ただ絵本を読むだけで寝てくれたら毎日どんなにラクでしょう。「心理学的効果なんて書いてあるし、いったいどんな仕掛けがあるのだろう?」と、期待を胸に即座に購入しました。実際に読んでみて思ったのは、「この本は、物語を読んで楽しむものではなく、絵を見て楽しむものでもない」ということでした。つまり、絵本でありながら、絵本という枠にカテゴライズされないのです。
それで果たして、どうやって寝かしつけるのか? そのカラクリを簡単に説明すると、本を読むことで、子どもに「あなたはだんだん眠くなる、眠くなる……」という催眠術をかけていくような手法が使われているのです。著者は、心理学者であり、言語学者でもあるそうで、いかにも子どもが眠りやすい言葉を多く活用しています。
内容は、なかなか眠れないロジャーといううさぎが、子ども(実際に自分の子どもの名前を入れて呼びかける箇所があります)と一緒に、あくびおじさんの家にいき、途中でふくろうとかたつむりに会って、話をして帰ってくる、たったそれだけです。ストーリーとしての面白さは、起承転結もなく、皆無であり、言ってしまえば本当にただの添え物です。
この本を効果的につかうための最も重要な要素は、別にあります。それは、「どれだけ、読み手に表現力があるか」。この本は親に対して、「ここはあくびをしながら」とか、「この言葉を強調して読んで」「抑揚をつけて」とか、どんなふうに読んでいくかを指示してきます。そうして、眠たげな雰囲気をつくりつつ、登場人物の「身体の力を抜いて」「考え事は箱の中にいれて」「眠りたくなる粉をかける」といった言葉を伝えさせることにより、徐々にリラックスさせて睡眠に導いていくわけです。