「親のしつけ体罰禁止」を明記した児童福祉法等改正案が19日、閣議決定された。今年1月に千葉県野田市の小学4年、栗原心愛さん(10)が自宅で亡くなり、両親が傷害容疑で逮捕された事件などを受けたもので、父親の勇一郎容疑者(41)は最初に逮捕当初「しつけだった。悪いことをしたとは思っていない」と話していた。
日本では大人の約6割が体罰を容認し、実際に子育て中の家庭の7割で過去にしつけの一環として体罰をしていたという全国調査もある(「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が2017年に実施)。この現実をどう変えていくのか。
DV被害者支援とDV加害者更生教育プログラムに取り組む民間機関「アウェア」の吉祥眞佐緒さんは「児童虐待が起きている家庭では、もれなく両親の間にDVがあると考えられる」と話す。そして、多くの加害者と向き合ってきた経験から「加害者は家族をコントロールする権利が自分にはあると固く信じている」と指摘する。どうして暴力が肯定されていくのか。そのゆがんだ価値観をどうやって変えていくのか。DV加害者プログラムの国内の現状や問題点について、吉祥さんに寄稿してもらった。
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野田市の痛ましい児童虐待死の事件では、日ごとに父親の栗原容疑者の取り調べの様子が明らかになっている。父親は「しつけだった」と一貫して容疑を否認、反省の言葉は一切出ていないという。また、虐待のほう助で逮捕された母親に対してDVを行っていたこともわかっている。こういう言動がどうして起きるのか。DV加害者プログラム参加者のケースから考えてみたい。
「常に自分の方が正しいし何でも知っている。家族は黙って僕に従っていればいい」
加害者プログラムに通う30代のA男さんは、年下の妻と交際した当時からずっとこう考えていたと話す。趣味のサークルの先輩として、後輩のB子さんを指導する役割だったという。交際当初B子さんは、何でも知っていてリードしてくれるA男さんを頼もしく思っていたことだろう。ここまではごく普通のカップルと相違ない。