平昌でも見せたように、羽生の強みは追い込まれれば追い込まれるほど冷静になり、丁寧で美しい滑りができることだ。平昌五輪のショートプログラム(SP)ではジャンプも必要最低限の力しか使わない、効率的でキレイな跳び方をしていた。4回転をサルコウとトーループにしている今季のSPは「今の構成ではこの得点がマックスだと思う」と話したようにロステレコム杯で完成形を作り上げているものの、羽生であれば、それをさらに上回るような完璧な滑りをしてくる可能性は高いだろう。
フリーはSP2位との得点差次第だろうが、もし2位と大きな差が付かなければ、チェンが全米選手権のフリーで3種類4本の4回転を入れる構成を完璧に滑って合計342.22点という驚異的な得点を出したことを受け、多少無理をしても4回転ループを入れる本来の構成で挑戦するかもしれない。
昨季より3週間という時間の猶予がある中で、ケガからどれだけ回復してくるかが大きなカギとなる。そのうえで、シーズン前半より確実に完成度を高めてくるであろうチェンや、今季は強い欲を持ってタイトルを狙いにくる宇野に対し、羽生が2年ぶり3度目の世界選手権制覇を果たすためには、どこまで冷静に自分の状態を見極めて、正確で丁寧な滑りができるかが大きな見どころになる。(文・折山淑美)