もちろん、全く分からない訳ではなく、仮に、女性に年齢を聞く必要が生じた場合は、必ず、枕詞のように「失礼ですけど」という言葉を添えます。ただ、僕自身、その失礼の意味を本当に分かってる訳ではなく、分かってるフリをしているだけのような気がします。

「女性に年齢を聞くのは失礼」、その失礼な理由として、よく「だって年齢なんて関係ないから」と言われます。僕も全く同感で、「年齢なんて関係ない」「年齢なんてどうでもいい」と思っています。だから逆に、「別に聞いたっていいんじゃないか」と思ってしまうのです。「関係ないから聞かなくていい」ではなく、「関係ないから聞いたっていい」という感じ。わたた。怒られそう。でも、長年の疑問ゆえ、書き進めます。

 たとえば天気の話をするように、たとえば血液型や星座や出身地を聞くように、当たり障りのない世間話をする感覚で、「関係ない」「どうでもいい」年齢の話をするのは、別に失礼ではないんじゃないか、と。初対面の人を少しでも理解しようと、色々お聞きする中で、「年齢だけ聞かない」のは、むしろ不自然なのではないか、と。

 まあ、しかしアレですかね、たとえば「いくつに見えます?」と女性から返された場合、「わざとらしくない程度」かつ「実年齢より少し若い年齢」を是が非でも言わなければ!というプレッシャーと全力で戦うことになるので、だったら最初から聞かなきゃいいんですよね。年齢。

 当たり前のことですが、年齢は男女関係なく、その人が生きてきた年数、「年輪」です。浅い年輪には可能性を、深い年輪には円熟を感じます。「関係ない」「どうでもいい」ってことでもないんですよね。

 そして、この定説には、今まで女性が闘ってきた歴史みたいなものも関係してるような気がします。さらには年齢差別というものに直面した経験がある方のことを考えても、年齢なんて関係ない、だから聞かなくていい、ということでいいような気もします。

 例によって何が言いたいのか自分でも分からなくなってきましたが、要するに僕にとって女性は、いつでも、いつまでも、この上なく美しい存在で、だから僕は女性が大好きで、おっと今のは嫁に怒られる、だからね、だからさ、そんな大好きな女性が怒らないよう、世の男性諸氏よ、女性に年齢を聞くのはダメ。絶対。完全に情緒不安定じゃねえか今回のコラム。(文/佐藤二朗)

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