●曽我蕭白が描く仏教図の彩色
今回展覧される画家の作品は、明治維新期の混乱の中で散逸し現在は国内外の美術館や個人蔵となっているものも多い。それだけ長く評価されずにきた画家たちだったということなのかもしれない。50年前、伊藤若冲などに再び目を向けさせた辻氏の『奇想の系譜』出版の功績は大きく、幕末の浮世絵師・歌川国芳へとつながる流れを改めて感じることができる展覧会といえるだろう。
まず、今回のポスターで目立っている曽我蕭白の「雪山童子図」は、釈迦(前世の修行僧時代)と帝釈天(羅刹の姿)を描いたもので、涅槃経の一説にある話がモデルとなっている。現在も三重県・継松寺が所蔵するが、非公開の寺宝だ。このように今でも当初の所蔵寺にあると、作品の持つ意味や背景などもわかりやすい。そう思う一方で、このけばけばしい色使いと、落ち着かない構図の仏教図をお寺がよく受領したものだと感心する。墨絵が重用されていた時代に、寺にあるには目立った絵画だったろう。
●シュールな浮世絵師・歌川国芳
役者絵師として知られる歌川豊国の弟子・歌川国芳は、武者絵を得意とする作品で名を知られるようになるが、西洋画や西洋の知識に興味を持ち、風紀粛正の時代の中で個性的なテーマを取り上げた人物である。今回展覧の平将門の遺児・滝夜叉姫を登場させた「相馬の古内裏」に巨大な骸骨を描いているが、これは西洋の書物を参考にしたのではないかと考えられるほどの正確さである。リアルさを追求した画風で、他にも宮本武蔵や忠臣蔵の四十七士、牛若丸など多くの有名武士たちを描いた。また、新吉原の妓楼の主人から依頼され、観音さま伝説のひとつ「浅茅ヶ原の一つ家」をテーマにした、4メートル近くもある絵馬「一ツ家」を描き浅草寺に奉納しているが、こちらもお寺へ奉納する絵馬の場面としては、リアルすぎるし取り上げるシーンのセレクトもムゴすぎる。
●“ZEN”を広めた白隠和尚の達磨図
『奇想の系譜』で取り上げられた1人ではないが、今回ピックアップされた白隠慧鶴も異色の画家である。