次に、2010年と比較してみよう。リーマン・ショック(2008年)の影響を受けて公務員や教員などの人気が“復権”した時期でもある。その2010年と比べて教育系の学部で志願者数が「激減」した大学は、埼玉大(-844人)、東京学芸大(-963人)、横浜国立大(-1145人)、大阪教育大(-1285人)、福岡教育大(-1362人)と、都市部で際立っている。

「旧帝大の教育学部以外は、志願者の減少が目立ちます。90年代に増えた教員免許の取得を卒業要件としない『ゼロ免課程』は、2010年代半ば以降、廃止する大学が増えました。つまり、教員免許を取得しないでも卒業できたのに、近年は再び必須になりつつあるのです。もちろん、減少の最大の要因は、ゼロ免課程廃止や学部改組に伴う募集人員の減少ですが、志願者の減少率は募集人員減少率を上回っています」(同)

■センター試験得点率4割台で合格も レベル低下を懸念

 上記にもあるとおり、この約10年間で1千人近く志願者数を減らしている国公立大も少なくない。石原さんは、志願者減少の理由を「学校が魅力的な場所ではなくなり、教員も魅力的な職業ではなくなった」ことだと考える。

「いじめ、モンスターペアレント、ブラックな過重勤務などが嫌われているうえ、少子化が改善されないので、生徒たちには『教員は将来性がない職業』に思われています。また、以前の生徒はもっとコミュニケーションをとれていたが、最近は人と関わるのが苦手な人が増えてきていることも、教員が敬遠される理由のひとつだと思います」

 教員を確保しなくてはならないため、地方の国立大では、センター試験の得点率が4割台の生徒も合格しているという。

 教育学部の志願者が減少していることもあり、教員採用試験の受験者も減少している。一方、ポスト団塊世代の教員の退職などによって合格者数は増えているため、倍率は以前と比べて下がっているのが現状だ。

「教育学部の合格が以前ほど難しくないため、教員のレベル低下が懸念されます。複数の進学校の先生から、『若い教員のレベルが落ちている』という話を耳にしました」

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教員採用試験の倍率が下がった結果…