総務省の「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」(2016年4月1日現在)によれば、非正規雇用の地方公務員は全体で64万3131人、うち清美さんのような「臨時的任用職員」は26万298人となる。

 清美さんが第1子を出産したのは約8年前だった。育児休業を取りたかったが、職場では、「あなたは育休を取れない。産後8週間の産休を計算して、何月何日に出勤しているか。その日にいることが、あなたの席を守ること」と宣告された。

 労働基準法では正規・非正規を問わずに全ての労働者に産前6週、産後8週の産休が認められているため、清美さんも産休は認められるが、産後2か月での職場復帰を余儀なくされるということだった。産後休業8週間が終わったその日、出勤できなければクビになる。

 清美さんは、「1日でも勤務しさえすれば、なんとかクビはつながる。あとは有給休暇を使って休んで体力面をカバーするしかない」と腹をくくった。産後、体調の悪かった同僚は出勤できずクビを切られた。職場に戻ることができたのは、お産がスムーズだった人だけ。難産で帝王切開となれば、傷口が痛くて産後8週では仕事をするまで回復できずに失職してしまう。お産の運次第では、職が失われる。

 当時、病院には院内保育所がなく、同居する実母に生まれたばかりの赤ちゃんを預けて働いた。まだ産後で体調が完全に回復しないなか、仕事の合間に母乳を搾乳し、家で実母に哺乳してもらった。

 すぐに第2子に恵まれたが、今度も育児休業を取ることができない。その頃、ちょうど清美さんの母は祖父母の介護もしていたことで体力に限界がきていた。母の負担が重いことで家庭崩壊状態に陥り、別居することになった。

 第2子は、切迫早産となって妊娠36週で産声を上げた(通常は妊娠40週頃に生まれる)。産休に入ってすぐに生まれたため、産前休業はなくなり、産後休業8週のみ取っての職場復帰となった。第2子は夜泣きが激しかった。清美さんが夕方に帰宅してから朝5時頃までずっと抱っこしなければ泣き続けるという状態が2週間も続き、常に睡眠不足で朦朧とした。そんなある日の出勤する途中、赤信号で車を停車している間に居眠りしてしまい、前の車に追突する交通事故を起こした。この時、「なぜ育児休業がないのか」と、産後すぐに職場復帰する辛さを痛切に感じた。

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子供が小さくても夜勤担当まで