そもそも、2013年9月のグアテマラ戦で遠藤保仁が決めてから長らく直接FKのゴールはなかった。アジアカップ前の最後のフレンドリーマッチとなったキルギス戦で原口元気が5年ぶりのFKゴールを決めて話題になったが、GKの明らかなミスに助けられた形で、原口本人も「カウントしないで」と苦笑いで語った。

 CKや間接的なFKからのゴールはここ最近でもいくつかある。ロシアワールドカップのコロンビア戦では、本田圭佑が蹴ったボールを大迫勇也がヘッドで合わせて決めて「大迫半端ないって」を日本中に流行させるきっかけとなった。しかし、そのキッカーだった本田はもう日本代表にいない。昨年9月のコスタリカ戦では佐々木翔のヘッドがオウンゴールを誘い、11月のベネズエラ戦では遠目のFKから酒井宏樹が豪快なボレーシュートで彼自身のA代表初ゴールを記録したが、両得点のキッカーだった中島翔哉(ポルティモネンセ)は大会直前に行われたポルトガルリーグのベンフィカ戦で右下腿を痛め、一度はチームに合流したものの無念の離脱となってしまった。

 トルクメニスタン戦では柴崎岳が右足、堂安律が左足のキッカーを務めたが、なかなか味方に合わなかった。逆にトルクメニスタンのCKから吉田麻也が相手DFのメカン・サパロフにフリーで合わされてしまい、危うく失点しそうになったシーンの方が目立った。オマーンにも左利きのアリ・アル・ブサイディという強力なキッカーがおり、相手のセットプレーにも気をつけなければいけないが、逆に日本がセットプレーから得点する希望は抱きにくい。

 守備を固めてきた相手を流れの中で崩すのは気持ちがいいものだが、ここから6試合もそううまくはいかないだろう。その中でセットプレーからの得点は求められてくる。左利きの堂安も質の高いキックを持っており、きっかけを掴めばスペシャリストとして台頭するポテンシャルはある。柴崎もロシアワールドカップ前の最後のテストマッチとなったパラグアイ戦では、鋭い軌道で相手のオウンゴールを誘った。キックのフィーリングが合ってくれば、セットプレーからの得点の可能性は高まるはずだ。また、追加招集された塩谷司もFKから直接ゴールを狙える能力を備えており、チャンスがあれば期待したい。

 ここから6試合を勝ち進んで行く道のりを想定すれば、セットプレーの得点がチームを助けるようなシチュエーションも出てくるだろう。PKでも、オウンゴールでも、ゴールはゴールなので、結局どんな形でも良いのだが、上位を目指すライバルたちがFKのスペシャリストを擁している中で、日本代表もなんとか武器にしていきたいが……。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。