◆参院選で右傾化せずに「右へウィングを伸ばす」方法

 よく、右へウィングを伸ばせという話を聞くが、それは、憲法改正の議論に乗れとか、安保法制で妥協する姿勢を示せということではないと思う。もちろん、幹部が揃って伊勢神宮参拝をすることでもない。自民党の言うことに妥協したり、タカ派に迎合する姿勢を示すのではなく、自民党にはできない、真の改革、すなわち、大企業のためではなく、新規参入企業、地方企業、そして、労働者、消費者のための改革を主張することこそ、左翼層ではない、無党派層にアピールする道ではないか。

「結の党」(江田憲司代表)が14年9月に解散した時、日本には、真の改革政党が無くなったというのが私の見立てだ。今、日本維新の会が改革政党を標榜しているが、はっきり言って、そのタカ派的な性格から、有権者の支持はほとんどなくなっている。

 立憲民主などの野党には、平和主義というブランドは定着しつつある。しかし、その最大の弱点である経済政策については、所得分配政策しかイメージが湧かない。そして、無党派層の多くは、それは単なるバラマキだと考えている。もちろん、分配政策は重要だが、それは、野党が主張しても、自民党にパクられて終わりというのが、これまでの経験だ。決して差別化にはつながらないのだ。

 参議院選、あるいは衆参同日選に備えて、選挙協力を急がなければならない。これが最重要課題であるのは事実だ。

 だが、それだけでは、推進力としてはまだ足りない。

 冒頭で、人々の不安の増大が安倍政権の不安定要因になること、そしてそれに対して安倍政権はバラマキ以外にも巧妙に対策を取りつつある例を紹介したが、それは、この人々の「不安心理」を逆手に取れば、野党には大きなチャンスがあることを言いたかったからだ。

 自民党が打ち出せない経済政策。それもバラマキとは一線を画した「夢のある改革」政策を打ち出せるかどうか。それが、人々に不安だけでなく、新たな希望を与えられるものになるのかどうか。

 さらに、それを説得的に語れるリーダー、いや、それだけでなく意外性のある「ヒーロー、ヒロイン」が出て来るのか。

 それが実現すれば、夏の選挙は俄然面白くなる。

 新年を迎えて、そんなことを考えると、少しは明るい気持ちになれるのだが。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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