こうした現状への不満、不安があっても、アベノミクスによって、将来は良い方向に向かうと信じられれば良いのだが、頼みの株価の上昇は止まり、経団連の輸出大企業を助ける円安も逆回転の兆しが見える。
ここでは、詳しくは書かないが、将来への希望の星であったはずの「成長戦略」も全く成果が出ていない。年末年始の報道を見ても、ハイテク分野で鎬を削る米中の話は出ても、日本は、良くても蚊帳の外、悲観的な記事では、もうほとんど両国には追い付けないほど引き離されているという現実を伝える記事があふれていた。
◆将来不安視する若者の日本脱出が始まった
おそらく、そういうことは若い人たち程敏感に感じているのだろう。最近は、優秀な若者が日本を見限る例が増えている。日本の経営者は能力が低いこともあり、社内に優秀な人材があふれているにもかかわらず、彼らを高給で雇って付加価値を飛躍的に上げるなどということは夢のまた夢。そこを狙って、アマゾンやグーグルといった米国の先端企業や中国を含めたアジアの成長企業が、好条件で日本人の優秀な人材をさらっていくのだ。
若者たちは、そういう状況を見て、日本に未来はないなということを肌で感じている。前に紹介した朝日新聞調査でも、40代以下で、老後の生活資金として年金が「あてになる」と答えたのは、わずかに2割に過ぎない。
そして、消費税の増税についても、これが社会保障の不安解消につながらないと思う人は、全体で見ても何と75%だった。
6年間のアベノミクスの結果は、国民の不安解消とは程遠いものなのだ。
◆韓国の二の舞にならないアベノミクス対案を
こうした状況を安倍政権は必死に糊塗してきたが、もはや限界だ。「経済の安倍」で下支えされた政権の支持率にも影響が出るだろう。
この流れは、夏の参議院選に向けて準備を進める野党陣営にとっては追い風だ。「アベノミクス」失敗を責め立てて、政権交代を訴えるには格好の状況である。
しかし、内閣支持率や自民党支持率が下がったから野党支持率が上がるわけではないというのが、近年の傾向だ。本当に大幅な支持率上昇を狙うのであれば、これまで訴えて来た憲法改正反対、反安保法制などでは全く足りない。
敵の経済政策の失敗を責めるのだから、自分の経済政策を訴えなければならない。「反対するだけでなく、対案を示せ」というのは安倍政権の常套句で、国民の頭にもかなり深く刻み込まれている。
私が与党の立場なら、こう言って野党批判をするだろう。「野党が政権を取ってもただのバラマキしかできません。株価は暴落し、直ちに日本経済は破綻の危機に陥るでしょう」。
実際、その言葉はあながち嘘だとは言い切れない。市場のアナリストたちと話していると、野党のバラマキ政策には批判が強い。また、水道法改正などの際に見られた、「反大企業」の姿勢は、経済軽視という印象を非常に強く印象付けた。