内容も、自民党のように予算要求の根拠を羅列するために作った役所の作文集ではなく、自民党ではできないなと思うようなものをいくつか数を絞って掲げればよいだろう。
例えば、最近注目されているEV(電気自動車)、自動運転、ライドシェアを取り上げて、「全国の過疎地で25年までに自動運転ライドシェアを実現」「そのためにタクシー規制を抜本改革」と打ち出す。EVも自動運転も自民党は掲げているが、タクシー規制の大幅緩和はタクシー業界の反対が怖くて打ち出せない。しかし、過疎地の高齢者などに大きな福音となる話だから、天使の成長戦略と呼ぶにふさわしい。
脱原発も、それだけでなく、具体策を掲げて成長戦略にする。「原発関連予算を全廃して再生可能エネルギーに投資」「官民ファンドは全廃し再生可能エネルギーファンドを創設」「地方出資過半の再生可能エネルギー発電にのみFITで優遇」「大手電力の発送電分離を完全所有分離として、送電線投資ファンド創設」というような話をそれによって生み出される付加価値を何兆円というように具体的に書く。これらは、いずれも自民党には絶対に言えない話だ。国民民主党でも言えないことが多い。だから差別化できる。
従来であれば、「原発関連予算全廃」「官民ファンド廃止」「不完全な発送電分離反対」というような「反対論」でしか語られていなかったが、それだけだと、何かマイナス効果ばかりなのではないかという不安が出て来る。
そこで、反対するのは、「反対のための反対」ではなく、「より夢のある」、しかももっと「儲かる」実利のある話につながるからなのだということを一つ一つ見せて行くのだ。
また、水道法の議論などを聞いていると、外資悪玉論とグローバリズムへの反対論ばかり目立った野党だが、それだと、逆に不安になる層も多いだろう。そこで、逆に外資を歓迎して日本を変えると唱える手もある。例えば、環境問題で世界に後れをとってしまった日本が、ドイツ、デンマークなどの先進企業を誘致して、世界最先端の自然エネルギー100%の先進地域を実現する。そのために、大手電力会社が嫌がる規制改革を唱えるというようなものだ。
これらの改革の先に見える日本の絵姿は、「成長を放棄した日本」ではなく、「人にやさしく、環境にやさしく、地方にやさしい」「全く新しい成長の姿を見せる夢の国日本」というものだ。
外資嫌い、大企業嫌い、改革反対という最近の立憲民主党、自由党、社民党の論調は、ほとんど共産党と同じだ。共産党には固有の支持層があるが、前回選挙では、立憲民主は、共産の票を吸収し、共産の票はその分減少した。ここで票の食い合いをしても野党議席大幅増にはつながらない。問題は、今の支持層よりも中立的な無党派層の支持をどうやって拡大するかである。
安保や憲法改正ではこれ以上声を大きくしても、無党派中間層への支持拡大にはつながらないのは、野党陣営はよくわかっているはずだ。