母乳をあげること、オムツを替えることなどの赤ちゃんの世話に慣れてくると、「私、何やっているのだろう」と思うようになった。子どもは可愛いが、子育てだけしているので良いのだろうか。本当は仕事がしたいんじゃないか――。
2人目の子どもも欲しい。本当は、少しでも働きたい。複雑な感情が夏美さんを襲う。
総務省の就業構造基本調査(2017年)では、「家族の仕事の都合」による転居をした女性は全体で627万4500人。うち有業者は290万3800人だった。夏美さんもそうした一人になる。「平成25年度育児休業制度等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によれば、「末子妊娠時就業形態別 退職した理由」のうち「夫の勤務地や転勤の問題で継続困難」が正社員の女性で8.3%、非正社員で4.7%となっている。
夫の転勤問題は、女性の賃金が低いということで長年、女性が離職を迫られてきた。こうした転勤問題についての調査は少ないが、夫の転勤による女性の側の不利益は大きい。選択的夫婦別姓についても、姓が変わることへの不利益は働く女性だけの問題ではない。安倍晋三政権のうたう“一億総活躍”の前提条件として必要な転勤問題や選択的夫婦別姓について、改めて考える必要があるだろう。(ジャーナリスト・小林美希)