プロジェクトへの参加は、新しい仲間との出会いにもつながった。
「OriHime(オリヒメ)の姿で一緒に働く仲間たちと向き合ったときに、ロボットじゃなくて、相手が実際の彼女にしか見えなくて『さえちゃーん!』『みかちゃーん!』って、泣いちゃいました。ALSになって絶望していたこともあるけれど、このプロジェクトに参加することで友達に会えて、ご縁がたくさんつながった」
藤田さんの夢は、20年の東京オリンピック・パラリンピック、25年の大阪万博で働くこと。OriHime(オリヒメ)があれば、仲間がいれば、どこにいてもできることはたくさんある。
■分身ロボットを使って自分の介護を自分でできるように
OriHime(オリヒメ)シリーズが照らすのは、障がい手帳を持った人たちの未来だけではない。分身ロボットがあれば、育児や介護のために自宅にいる人たちも会社で働けるし(事実、在宅勤務を導入する目的でNTT東日本はOriHime(オリヒメ)を66台導入している)、日本に住みながら外国で働くこともできる。台風の日は分身ロボットを遠隔操作して自宅で働いてもいい。
さらに、吉藤さんは「誰もが分身ロボットを使って自分の介護を自分でできるようにすること」を次の目標に掲げた。道のりが長いように思えるが……と聞いてみると、「全部は無理でも、身体をさすったりとか、冷蔵庫を開けて飲み物を持ってくることは現段階でもできる。いちいち誰かに『コーヒー飲みたい。できれば砂糖は甘めで』とか『カーテンをもうちょっと開けて』とお願いしなくても自分でできるというだけで、意義は大きいと思います」。
もしかすると、未来はそう悪くないかもしれない。「カフェDAWN ver.β(ドーン·バージョンベータ)」は、大きな可能性を感じさせてくれる実験だ。
(文/大室みどり)