「森友文書 書き換えの疑い」。3月2日付朝刊1面にスクープが掲載された。森友学園側との交渉についての記載や、「特例」などの文言が複数箇所でなくなったり、変わったりしている。そう伝えた。

 記事が掲載されると、財務省は「大阪地検の捜査に支障がある」と説明を避け続けた。「朝日新聞は、記事が誤りではない証拠を示せ」といった論調も出てくる中、3月9日付朝刊1面トップで書き換え内容を詳しく報じた。見出しは「森友文書 項目ごと消える」。1ページあまりにわたる「貸付契約までの経緯」という項目がすべてなくなるなど、改ざんが抜本的に行われていたことを伝えた。

 この日の午後、「佐川長官が辞任の意向固める」とのテレビ速報が流れた。森友問題をめぐる国会答弁に立ち続け、昨年7月に国税庁長官に就いた佐川宣寿・前財務省理財局長だ。

 午後7時すぎ、報道陣にもみくちゃにされながら佐川氏が財務省の大臣室に入った。約25分後、大臣室から出てきた麻生太郎財務相が記者会見し、佐川氏の辞任を発表した。

 午後9時前から佐川氏が立ったまま、報道陣の取材に応じた。「決裁文書の話は、現在の国会で大変大きな議論になっており、提出時の担当局長だったことがあるので責任を感じて本日辞職をした」などと述べる一方、書き換え疑惑については、「大阪地検の捜査を受けているので一切コメントを差し控えたい」と回答を拒んだ。

 週が明けた3月12日の月曜日。麻生氏は会見で文書の書き換えを認めた。「昨年2月下旬から4月にかけて、本省理財局において森友事案に関する複数14件の決裁文書の書き換えが行われていたことが明らかになった」と語った。

 改ざん前の文書を読むと、土地取引をめぐる少なくない疑問が解消される。浮かび上がるのは安倍晋三首相の妻、昭恵氏との関係や国会議員の名前を語る学園側に、財務省側が異例な対応を重ねる姿だ。佐川氏は国会で、森友学園との交渉記録を「事案終了後」に廃棄したと答弁していたが、本当は問題発覚後に国会審議が進むさなかに廃棄が進められていたこともその後、明らかになった。こうした経緯が明るみに出たのは、改ざん報道の一つの成果だと考えている。

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