前半26分には相手のクリアボールをセンターバックの吉田麻也が前に出て拾った流れから興味深いシーンがあった。そこから、遠藤とワンツーした吉田が左ワイドの中島に振ると、中島がフォローに入った遠藤に預ける。その時、ゴール前は南野、大迫、堂安が横並びしている状況だった。遠藤から南野にショートパスが出ると、南野がファーストタッチで手前に下がる。

 そこにセンターバックの一人がプレスに行ったことで生じたギャップに大迫が回り込む。すると、今度は大迫に守備が引きつけられ、そのギャップに堂安が動き直してマークを分散させる。そこで余裕を与えられた大迫がボールをキープして、右に開いた堂安に横パスを出すと、二人の間に南野が飛び出す。堂安は利き足ではない右足のシュートを選択し、惜しくもゴール左に外れた。細かい工夫だが、一連の攻撃におけるわずか数秒の短い時間で3人が密接に連動する形は目を見張るものがあった。

 さらに、興味深かったのが後半8分、再び堂安のシュートが惜しくも決まらなかったシーンだ。GKシュミットからのロングキックを左ワイドに流れた大迫が、ディフェンスを背負いながら手前の中島に落とす。中島がインサイドに持ち出す間に、右サイドから堂安が流れてパスを受け、そこから動き直して飛び出す大迫へ。そして南野が前線に飛び出すと、堂安はクロスオーバー(左右の選手が交差すること)で斜め左に飛び出して大迫からラストパスを引き出すが、左足のシュートはコースが甘くなり、GKに阻まれた。

「(流れの中でのポジションチェンジは)フィーリングですね、まったく話してないです。ただ、本当にすごいと思うのは、俺が真ん中を取っていったら、勝手に右サイドにいってくれるし、迫くん(大迫)がよく流れてくれる。逆にしゃべりすぎても、相手に雰囲気を読まれるし、それはさすがだなと思ってプレーしていました」

 堂安はそう語るが、実際こうした短い時間の中で位置が変わるようなコンビネーションが増えた。基本ポジションは左から中島、南野、堂安だが、流れの中でポジションチェンジやクロスオーバーからのコンビネーションがさらに見られるようになった。ちなみに、そのシーンからしばらくは堂安が中、南野は右サイドでプレーしていた。さらにうまくはいかなかったが、中島が中に入り、南野が左に開いてワンツーを試みるシーンもあった。

 攻撃の緩急や幅、奥行きといった全体でのゲームメイクは改善の余地があり、コンビネーションの質と精度もまだまだ高められるはず。だが、これまで“競演”だった3人のプレーが“共演”になってきていることを感じさせる3人のパフォーマンスだったことは確かだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。