赤ちゃんや幼い子どもと触れ合う経験がないまま親になる人が増えています。そのため、子育てに不安を抱えやすく、特に子どもが男の子の場合、「まるで宇宙人」「育て方が分からない」というお母さんが多いのです。
そんな不安にやさしく答えるのは、東大合格者数37年連続日本一の開成中学・高校の柳沢幸雄校長。著書『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)でも紹介した、子どもの心を安定させ、能力を伸ばす簡単な方法をお伝えします。
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私は講演会の時に「皆さんに英語で自己紹介をしてもらいます。2分間差し上げますので、考えてください」と言います。参加者は大人なので、少なくとも10年くらいは英語を学んでいますが、「さぁ大変だ!」と、必死に考えるんですね。実際に当てはしないのですが、このことによって「子どもに話をさせることがいかに大切か」を実感してもらっています。
たとえば3歳の子どもなら3年間しか日本語を学んでいないわけで、幼稚園児にしても、4~5年しか日本語に触れていません。もし、大人が4~5年しか学んでいない状態で外国語を話せと言われたら、どうでしょう。何かを話そうとする時には、頭の中でいったん言いたいことをまとめなければなりませんから、脳がフル回転するはずです。
つまり、子どもが話をしているときには頭の中がグルグルと回転しています。脳の働きとしたらこれほど重要なことはありません。
だからこそ、子どもの力を伸ばすには、とにかく「話させる」。そのために必要なのが、大人がしっかり聞き手になってやることです。
親が熱心に耳を傾ければ、子どもは安心して話せますし、自分の話が通じているのがわかれば自信が湧いて、もっと話したいと思うでしょう。同時に子どもは、「自分は受け入れられている」と安堵し、良い親子関係が構築できます。
つまり、脳のためにも心のためにも、子どもに話させることが非常に重要なのです。
割合としては、子どもが6~7割話して、親が話すのは2~3割で、あとは聞いてあげるのをお勧めします。私はそれを「2対1」の原則と呼んでいます。
とはいえ、子どもが小さいうちは、まとまった会話が難しいですから、子どもが言った言葉をおうむ返しにするのが良いでしょう。
「お腹すいた」と言えば、「そう、お腹がすいたのね」と言い、「嫌だ」と言えば「そう、嫌なのね」と答えるわけです。一見何気ない会話に見えますが、子どもにとっては、「自分が言ったことがちゃんと伝わっている」という喜びになっているのです。