たとえば渋谷のスクランブル交差点の写真を撮り、2Lプリントで見る分には、交差点を歩く人の顔は見えない。しかし、高解像度画像をパソコンのモニター上で拡大すれば、一人ひとりの顔がはっきりと見える。たまたま通りがかった人から、「顔がわかるから肖像権侵害だ!」と言われる可能性はゼロではない。

 リサイズの手間を惜しまず、発表の場に合わせて適切な画像解像度にしておくことを習慣化しておきたい。

 最後に、ポートレートや特定の人にフォーカスしたスナップ写真など、人を主体とした写真を発表する際の注意点について考えておこう。

 それは被写体の肖像権だ。安心なのは、被写体本人の承諾を得ておくことだ。スナップ撮影で、通りすがりの人を撮った場合でも、撮影後に声をかけて事後承諾を取ることができれば問題ない。承諾なしに発表する場合は、それ相応の覚悟や信念が必要だろう。

 ポートレート撮影の場合は、モデルは承諾のうえで撮影に臨んでいるが、発表となれば別の話。あらかじめ、モデル本人とどういう形で発表するか、撮影した写真をSNSに投稿してもいいか、ポストカードにして販売してもいいか(商業利用)、いつまで使用してもいいかなど諸条件を取り決め、事前に契約を交わしておくことが望ましい。

 契約と聞くと「大げさだ」と思うかもしれないが、これはモデル本人だけでなく、撮影者の著作物(作品)を守るうえでとても重要なこと。手間を厭いとわず、双方納得のうえで発表するようにしたい。

(文/吉川明子)

※「アサヒカメラ」11月号から抜粋

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