日本テレビは有働由美子を迎えたが… (c)朝日新聞社
日本テレビは有働由美子を迎えたが… (c)朝日新聞社

 近年の日本テレビ視聴率争いで民放トップを独走してきた。ところが、その勢いにも陰りが見られるようになってきた。2018年10月にテレビ朝日が月間全日視聴率で単独トップに立ったのだ。それまで日本テレビは月間視聴率で3冠(全日、ゴールデン、プライム)を維持していたのだが、その連続記録は58カ月でストップしてしまった。

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 テレビ朝日が視聴率トップに立った最大の理由は、ドラマが軒並み好調であることだ。テレビ朝日では米倉涼子主演のドラマ『ドクターX 外科医・大門未知子』が長年にわたり高い視聴率を保つ人気シリーズとなっていた。今期は同じ米倉主演で新ドラマ『リーガルV 元弁護士・小鳥遊翔子』が始まり、これが『ドクターX』に負けないほどの高い視聴率をマークしている。また、水谷豊・反町隆史主演の『相棒』、沢口靖子主演の『科捜研の女』も手堅く支持されている。これらのドラマがテレビ朝日躍進の原動力になっている。

 また、帯の情報番組や報道番組でも好調が際立っている。朝の情報番組では『羽鳥慎一モーニングショー』が民放では同時間帯トップの人気を維持しており、夜のニュース番組では新たに元テレビ朝日アナウンサーの徳永有美が加わった『報道ステーション』が変わらず高い支持を受けている。さらに、バラエティでは新番組の『ポツンと一軒家』が空前の大ヒットを記録中。全分野で好調を保ち続けたことで、絶対王者の日本テレビの牙城を崩すことに成功した。

 日本テレビは2014年から2017年まで年間視聴率で3冠を維持してきた。その圧倒的な強さの鍵はバラエティ番組にある。日本テレビには『マジカル頭脳パワー!!』『エンタの神様』など数々の高視聴率番組を手がけてきた五味一男というプロデューサーがいる。彼は視聴率を取るための独自の理論を持っていて、後輩たちにもそれを伝えている。五味のもとで育ったテレビマンが「五味理論」を駆使して徹底的に視聴者を満足させるための番組作りにこだわり続けたことで、根強い人気を保つバラエティ番組が次々に量産された。特に、日曜ゴールデンの『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』という並びは圧巻である。日本テレビが王座を保ってきたのはそれが理由である。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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