――日本政府とのやり取りについて、武装勢力側からいつどのような説明を受けたか具体的に教えてください。


 
私の家族に対しての説明だったのですが、9月11日に「来週、政府高官か現地で信頼できる人間から情報を聞く予定である」と言われたそうです。その後、9月19日に家族から話を聞きまして、「体の状態は良い。食事はとれている。ただ、たくさんもりもりと食べるような状態ではない。しかし、精神的には疲れている。彼らのトップと話ができている。拘束者はフッラース・アル・ディーンだと。フッラース・アル・ディーンとはヌスラ戦線から分離した中で外国人をかなり含む組織で、アルカイダのような活動フッラース・アル・ディーンと。イドリブ県の西のあたりを動いていて、一般家庭の部屋を2部屋くらいを使っている。家の周りのコンクリート塀が高くなったので、それが精神的ストレスになっているかもしれない。身代金以外の解決の手段を探っている」というようなお話でした。
 
――案内人を信用した根拠や過ちだったと思う根拠を教えてください。
 
案内人に従うかどうかは信頼するかしないかの二択で、それによって入ったということは信頼したということですが。日本人のジャーナリストから紹介されたシリア人難民支援をしている小学校の人たちから紹介された。それから後藤さんのガイドを以前やっていた人であると。というあたりで、入り方の説明や後藤さんとのかつてのやり取りを聞きました。たとえば彼と後藤さんで子どもたちの教育プログラムを立ち上げたと、当時の写真も見せてもらいました。後藤さんと一緒に衛星電話の機材を入手し、ネットにつなぎながら、子どもたちが勉強するプログラムを立ち上げていたと。そういう話を聞いて「そういう人であるなら大丈夫なのではないかな」と判断しました。
 
後藤さんが拘束されている間に「I AM KENJI」と顔を出して、心配するような映像を流していたこともこの人は大丈夫ではないかと判断した一つでした。彼が騙していたかどうかは分からないですが、入り方は完全に凡ミスであるので。それから、お配りした経緯には書いていませんが、2015年10月末に私のいた部屋の窓の外に人が来て、話しかけてきました。「誰だ」と聞かれ「日本人だ」と。「純平か」と聞かれ「そうだ」と。「ここで監禁されていると。彼らは金を求めている」と言うと、「襲撃して助けてほしいか」と聞かれ「助けてほしい」と言ったら、その後30分後に来たんです。その時、窓を閉めていて中が見えない状態でした。中が見えないときに話しかけてきたんです。そして、彼らがフルーツを持って部屋に入ってきたのですが、そのときにまた話しかけてしまって捕まってしまいました。彼は部屋に引きずられてきて、「こいつに何を話したか」と聞かれました。結局彼は別の部屋に連れて行かれました。彼らが仕込んだイベントかもしれないですが、あまり意味がないので。(当時)私がNHKワールドを流していて、大音量でジャパンジャパンと流していました。日本人がいるという噂が流れるのではないかと流していたのですが、それを聞いて来たのかなとも思いました。その後、彼がどうなったのかというところは、色々聞いてはいますがまだ分かりません。そういった出来事もありました。そして、大きな施設にいた際、囚人の尋問で、「日本人を助けようとして捕まった」と言っている囚人がいて、わざとやったのではないのではと思っていますが、特定できないので。ここはこれ以上のことは分からないです。
 

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