少子化による人口減、製造業の競争力低下などで、日本の成長力は衰え、アベノミクスの第3の矢はいつまで経っても発射できない。そんな中にあって、インバウンドは大きな伸びが期待できる分野だ。17年の訪日外国人数は2869万人と、5年連続で過去最高を記録している。インバウンド消費額もうなぎのぼりで、今年は5.1兆円に達するという予測もある。
ちなみに、羽田の新ルートは外国人客を呼び込むのに重要な役割を果たすと期待されていて、国交省の試算では、今回の発着枠拡大による年間の経済効果は約6500億円にのぼるということだ。国交省の試算だから多少割り引いて考えるとしても、非常に大きな金額であることは間違いない。
もし、このまま唯々諾々と米軍の拒否を受け入れてしまえば、2020年に訪日外国人数4000万人、消費額8兆円という政府の目標は絵に描いたモチに終わるかもしれない。さらには、日本の観光政策の練り直しも迫られることになるから、日本にとって、由々しき問題だ。
■安倍政権は本気の交渉をするべきだ
2020年からの発着枠拡大のためには、年内には、各航空会社との調整を始める必要があるため、もうタイムリミットが近づいている。少なくとも、今回の発着枠拡大については、日本側の主張をとことん主張し、それができないなら、ドイツ・イタリアには改定を認めて日本に認めないのは、日本だけに原爆を落としたのと同様、アジア人差別ではないのかというくらいのことを言っても良いのではないだろうか。
12月には米国からの高額武器購入の予算が決まる。それを取引材料に使うこともできるはずだ。
冒頭に述べたとおり、安倍総理をはじめとする現政権の改憲派は、現行憲法を「アメリカからの押し付け憲法」「70年以上改正されず時代に合わない」と批判してきた。ならば、同じくアメリカから締結を強要され、60年近く改正されていない日米地位協定も改定に乗り出すのが筋というもの。今回の新飛行ルート設定拒否に対してもより強い姿勢で交渉すべきだ。