「彼の思い通り、持っているものさえ出してくれれば、いいピッチングができると信じていますので、彼の思い通りのピッチングをしてくれればいい」と工藤監督。相性、好調の打線、現状の勢い、そして経験。シリーズ開幕を前に、準備には抜かりはなさそうだ。そんな中であえて、ソフトバンクの一抹の不安を挙げるとするならば、鷹ナインが異口同音に「怖い」と指摘する、敵地・マツダスタジアムの熱狂的応援かもしれない。

 真っ赤に染まる敵地、そして大歓声。そのプレッシャーが「当然ありますよ」と断言するのは主将・内川聖一だった。

「声援の大きさで、試合の流れは大きく変わる気がするんです。カープファン、相当入る中で、声援は間違いなく力になる。選手はそれが分かっているし、そういう雰囲気に飲まれないようにしないと。チャンスでも、雰囲気がかき消されて、なくなってしまうこともある。惑わされないよう、自分たちの力をしっかり出せるようにしたい」

 工藤監督も、その“やりづらさ”が少々気にかかっているという。

「ずっとビジターではないし、ヤフオクドームで3試合。そのときは逆の立場になるとは思いますが、やはりセ・リーグの球場でやる時っていうのは、応援はすごいですし、その圧力っていうのもすごいと思います。ただ、ウチの選手たちはそれに負けるような選手ではないと思ってますんで。そういう中でも自分たちの力を、それ以上を発揮してくれるとは思っていますし、期待もしています」

 そのアウェー感が顕著に結果に表れた前例がある。2003年、王貞治監督(現球団会長)が率いるダイエー(現ソフトバンク)と、星野仙一監督(故人)の阪神との日本シリーズ。甲子園と博多、それぞれの本拠地が見せた熱狂的応援の中、ダイエーが博多での4試合、阪神は甲子園での3試合を制した典型的な“内弁慶シリーズ”だった。また、工藤監督就任後の過去2度の日本シリーズを見ても、2015年はヤクルト相手に博多での第1、第2戦を連勝し、最終的に4勝1敗で日本一。DeNAを下して日本一に輝いた昨年も4勝のうち、博多で3勝。「博多」と「広島」の、それぞれのファンによる情熱あふれる応援スタイルを思い浮かべれば、今シリーズも“ホームアドバンテージ”が大きな力になることだけは間違いなさそうだ。

 ただそんな中でも、柳田悠岐はどこ吹く風のようで、いつも通りのマイペースぶり。CSファイナルステージ5試合で打率.450、2本塁打を放ってMVPを獲得するなど好調をキープする主砲は、広島生まれの広島育ちで、名門・広島商から広島経済大というキャリア。かつて広島ファンだったことも全く否定しない、生粋の“広島人”にとって、マツダスタジアムでの日本シリーズはまさに凱旋となる。家族、友人ら地元の関係者を招待するために「しっかりチケット、購入いたしました」とうれしそうだ。

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広島を倒してパ・リーグ初の球団へ